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&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第8回)
「ブランディング活動の第一段階<調査・分析>では具体的にどういうことをするのか?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第8回目のテーマは、
「ブランディング活動の第一段階<調査・分析>では具体的にどういうことをするのか?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.第一段階<調査・分析>-(1)顧客分析

<調査・分析>プロセスでまず行うのが、(1)顧客分析です。
顧客分析では、ターゲット層の顧客の潜在的なニーズを深掘りして顧客のインサイト(=真の本音)を探っていきます。

具体的には、「どうしてその商品を買ったのか?」、「どうしてその店を選んだのか?」といった実際に目に見える行動から、顧客の心の奥底にある潜在的ニーズを洞察していくのです。

ここで注意すべき点は、顧客自身も深層心理の奥底にある本音に気づいていないことが多いことです。
例えるなら、顧客インサイトは火山の地中深くにあるマグマみたいなもので、顧客分析は火口から溢れ出した溶岩をたどって、地中深くのマグマを探り当てていくようなイメージです。

それではなぜ、顧客自身すら気づいていないようなインサイトを分析していく必要があるのでしょうか?
顧客インサイトは競合他社がまだ気づいていない市場ニーズをとらえるために非常に大切な要素だからです。

顧客の普段の表面的な行動からは見えないような深層心理に迫るニーズを捉えることで、高い差別性を持つブランド戦略が可能になります。
そういう意味で、顧客インサイトはまさに顧客の潜在的なニーズの掘り起こしにつながるものであり、ブランディングを成功させるカギになるものといえます。

それでは、具体的に顧客インサイトを探るのはどうやってやるのでしょうか?

従来型のアンケート調査だけでは、表面的な気持ちや考えを表現する回答が多くなりがちなため、それ単独では顧客インサイトを的確に発見するのは難しいでしょう。

そこで、以下のような様々な調査手法を組み合わせて活用することで、顧客インサイトに迫っていくようにします。

①エスノグラフィー(行動観察調査)

対象顧客の行動を細かく観察してインサイトについての仮説を立てながら考えていく調査手法です。

具体的には、顧客の発言内容や立ち居振る舞いの仕方、そして、身につけている物などを細かく観察することで、顧客インサイトに迫っていきます。

なぜなら、人の好みや趣向は発言内容や立ち居振る舞い、そして身につけている物に現れがちだからです。

②バズ分析

SNSやインターネットの口コミの内容を分析することで対象顧客層のインサイトに迫っていく調査手法です。

具体的には、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSやネット記事を閲覧して、注目を浴びて話題になっているものや、自社の商品についての率直な意見や感想を読み取ります。
SNSやネットの記事は匿名アカウントで投稿している人も多く、匿名だからこその自由な発言や意見が交わされる場所ですので、インサイトに迫りやすい調査手法といえます。

これに関連して、ウェブ上のコミュニティープラットフォームでのユーザー同士のやりとりの中にも顧客インサイトが現れていることも多いので、注意して発言内容を追っていくことも大切です。

③カスタマージャーニー

顧客が商品を知ってから購入し、購入後に利用・活用するまでの行動や思考などの流れを追うことで顧客インサイトに迫っていく調査手法です。

カスタマージャーニーは、顧客インサイトを探り当てるための有効な調査手法といえます。
実際、自分が自社の製品・サービスを購入して利用する顧客になったつもりで、他社製品やサービスとの比較検討段階→購入段階→購入後の活用段階というふうに疑似体験していくことにより、顧客のインサイトを理解できることが多いためです。

また、店舗型ビジネスにおいては、カスタマージャーニーの一環として、顧客と社員の対話から顧客インサイトを探るのも有効といえます。
顧客も社員の接客によって打ち解けてくると、本音が垣間見える発言をして下さることがあり、それを直接聞き取りできる機会もインサイトを集めるためには貴重だからです。

_2.第一段階<調査・分析>-(2)競合分析

<調査・分析>プロセスで次に行うのが 競合分析です。

目的は、競合分析により競合他社との差別化ポイントを探ることです。
ブランディングの成功にとって最も必要な要素は他社との差別化だからです。
競合他社の商品と違いがないものであれば、自社の商品が顧客から選ばれることはないのです。

長期間顧客から支持され続けているような強いブランドほど、「〇〇と言えばこのブランド」というような、他とは明確に差別化されたイメージが顧客の頭の中にできているものです。

ここでいう「差別化」とは、ブランドに個性を持たせて他とは異なる独自性を発揮させることです。

そして、差別化には、ブランドの性能や品質といった機能的な差別化と、そのブランドを使用することによる快適さや、身につけている時の精神的な満足感などの情緒的な差別化があります。

競合分析での差別化の検討ポイントは、自社のブランドと競合他社との違いが顧客によって認識されていることはもちろん、その違いが顧客にとって有益な価値として感じられることです。

差別化できているかどうか、そして、その差別化が有益な価値あるものと感じられるかどうかは、顧客が決めることだからです。
自社の自己満足となるような分析では意味がありません。
あくまで、顧客視点からの客観的な分析に努めましょう。

競合分析によって自社ブランドの持つ強みを発見できたら、その強みと顧客が評価するポイントを顧客が分かるように明確化しましょう。
それによって自社の強みが顧客に伝わりやすくなるからです。

それでは他社との差別化ポイントである自社の強みはどのように考えたら良いのでしょうか?

ここで差別化を考える上で有効なのが、「ブランドパーソナリティー」、「ブランドポジショニング」の設定という考え方です。
もしも競合他社と同じようなブランドパーソナリティーやポジショニングを設定してしまいますと、顧客からは区別がつかず、自社の商品が選ばれる理由がなくなってしまいます。

そのため、しっかりしたブランドパーソナリティーやブランドポジショニングを設定することで、明確な差別化を図っていくべきなのです。

ここで「ブランドパーソナリティー」とは、人間でいえば「人格(=どんな人柄の人なのか)」にあたるもので、ブランドの「人格的な個性」を表すトータル的なイメージのことをいいます。

代表的なブランドパーソナリティーの具体例としては、「誠実」、「斬新」、「信頼」、「洗練」、「力強い」などといった言葉で表されるイメージになります。

ブランドパーソナリティーの設定が大切なのは、自社と他社のそれを比較することで、自社の強みを浮き彫りにすることができるからです。
また、自社と他社のブランドパーソナリティーの比較分析をすることによって、適切なブランドポジショニングが何なのかを導き出すこともできます。

「ブランドポジショニング」とは、市場ニーズに合わせて自社ブランドが今だけでなく今後どのような地位を目指していくことが有効なのかといった、市場の中での自社ブランドの立ち位置のことです。
他社とは明確に異なるブランドポジショニングを設定できれば、顧客から選ばれる理由が高まり、ブランド価値が向上するでしょう。

最後に、ブランドポジショニングを考えるための検討事項をご紹介しておきます。

・現在の自社ブランドの価値や能力
・現在の顧客ニーズで需要を駆り立てるもの
・市場変化による新たな機会
・将来の自社ブランドが目指す姿

これらを検討していくことで、適切なブランドポジショニングが見えてくることが多いです。
ぜひこの検討事項を活用して、他社とは明確に差別化されたブランドポジションの設定をできるようになっていきましょう。

諸事情によりご自身でブランディングを考えるのが難しい場合には、いつでもお気軽に私たち&FORCEにご相談いただければ幸いです。

_3.第一段階<調査・分析>-(3)自社分析

ブランディング活動の第一段階である<調査・分析>プロセスでは、最後に(3)自社分析を行います。

自社分析を行うことで、市場の中での自社ブランドの立ち位置や強み・弱みを発見することが目的です。

具体的には自社自体と自社ブランド両方の分析を行います。
個人の場合においてもそうですが、将来的な成長のためには、自社の立ち位置や特徴を客観的な視点から冷静に分析することが必要だからです。
自分が思い描く理想の姿と現在の現実の姿を正確に把握するように努めましょう。

それでは、自社の「強み」とは何でしょうか?

「強み」とは、厳しい市場競争の中で有利となる他社との差別化要素のことです。
例えば、競合ではマネできない独自技術を持っていたり、独自の素材を製造できる、あるいは、入手できることなどが「強み」といえます。

もちろん、これら以外にも、長い歴史や伝統を持っていること自体が社会的信用を高めているという意味で「強み」になることもあります。

また、特定の分野での高い市場シェア率なども経験効果(=製造・販売経験を積み重ねることにより得られるコスト削減効果)のメリットを生かせるため、「強み」になります。

このように様々な角度から自社を分析することにより、他社と差別化できるような独自の価値ある「強み」を見つけ出すようにしましょう。

それと同時に、弱み(=克服すべき課題)をあぶり出すことも大切です。

いくら特定のニッチ(隙間)市場で強い支持を得られそうな強みがあっても、その強みを打ち消すほどの弱みがあれば、その製品・サービスは顧客の選択対象から外されてしまうからです。

独自性を持った価値ある「強み」を磨いて尖らせつつ、目立つ「弱み」はせめて業界平均点レベルまで克服しておく必要があるのです。

また、「弱み」を見つけ出した場合には、その原因が競合他社によるものなのか、自社や自社ブランドによるものなのか、市場環境全体によるものなのかなどを正確に分析しましょう。

原因をしっかり理解しなければ、克服するための対策の立てようがないからです。

このように自社の強みと弱みを分析していくわけですが、強みを発見したら、その源泉となる自社ブランドの「ブランド資源(リソース)」は何かをきちんと定義しておきましょう。

また、社内外の人から強い支持を得て、自社と人々を結びつける「ビジョン」や「ミッション」は何かについても、しっかりと文章化しておきましょう。

無意識のレベルまで含めて暗黙の了解になっていたものをきちんと文章化することで、社内外の人々と「ビジョン」や「ミッション」を共有しやすくなるからです。

なお、「ビジョン」や「ミッション」は企業理念に基づいたものであることも重要です。
企業理念に基づかないビジョンやミッションは顧客から見てちぐはぐなイメージになり、混乱を引き起こし、ひいては不信感を買ってしまうことになりかねないからです。

さらに、自社の強みが見つかれば、それを強みとしたブランド価値の提供が実際に可能かどうかを精査しましょう。
強みがあるにはあっても、それが事実上実現不可能なものでは検討する意味がなくなってしまうからです。

最後に、自社分析をする上で大切なのは、既存市場との関係で自社ブランドの強みを考えるだけではなく、<その強みを活かせるようなニーズがある新たな市場を探ってみる>といった広い視野を持って検討することです。

今まで盲点となって気づいていなかった魅力ある市場が見つかるかもしれません。
その際のポイントは、これまでのタッチポイント(=顧客との接点)だけで考えるのではなく、新たな潜在顧客とのタッチポイントを自分から見つけ出していく意識を持つことです。

このように、自社分析によって市場の中で有利になれそうな自社の強みを見つけ出し、その強みを磨きあげて差別化を図ることで、競争上優位に立てるようにしていきましょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第9回)では、「ブランディング活動の第二段階<ブランド戦略策定>では具体的にどういうことをするのか?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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