&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第21回)
「競争地位別のとるべき戦略とは?(後編➀)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第21回目のテーマは、
「競争地位別のとるべき戦略とは?(後編➀)」です。

それでは行ってみましょう!

_3.ニッチャーブランド

3-1.ニッチ/ニッチャーとは?

「ニッチ」とは、もともとは花瓶を置くための板面の凹みのことを指すものでした。
そこから転じて、割れ目や隙間を表す意味になりました。

マーケティングやブランディングの世界では、「ニッチ市場」とは隙間市場と訳すことが多いです。
そのため、「ニッチャー」とは、小さなセグメントではあるものの、競合ブランドが参入して来られないような隙間市場に経営資源を集中投入し、そこで圧倒的なシェアを握っているブランドのことをいいます。

例えば、ニッチャー企業として有名なのは超高級自動車を生産・販売しているフェラーリでしょう。
世界の各大手自動車会社の年間生産台数が数百万台と言われる中で、フェラーリは年間1万台と少ししか生産していません。

それにもかかわらず、利益率はダントツで25.5%、営業利益額は1台あたり平均1330万円になります。
従業員数もフェラーリは約4500人しかいません。

それにもかかわらず、フェラーリといえば赤を基調とした超高級自動車というイメージは世界を席巻しています。
まさに中小企業がお手本とすべきニッチャー企業と言えるでしょう。

このように、ニッチャーブランドは、特定の狭いターゲットセグメントを狙い、そこの強いこだわりを持つ顧客のニーズに適切に応え続けることで、少数精鋭にもかかわらず高い利益率を誇るようなブランドなのです。

3-2.ニッチャー戦略が成り立つ市場環境及び戦略目標とは?

以上のことから、ニッチャーブランドの適切な市場環境(ターゲット市場の選択)とは、趣味・嗜好に強いこだわりを持つ人たちが集まるような特定の狭いセグメントになります。
つまり、自分の趣味や嗜好にかなった商品であれば、お金に糸目はつけないというほどのこだわりを持つマニアの方たちがターゲット顧客になります。

そのため、戦略目標も、ファンの方たちの強いこだわりに応えるような魅力的で独自の価値を持った商品を提供することにより、高い利益率を確保することになります。
また、成長スピードが早すぎる市場ですと、リーダーブランドが目をつけて参入してこようとする恐れが出てきます。

そのため、リーダーに邪魔されずに安定した売上げを上げながら、ある程度マイペースの成長を続けられるような市場を確保することが戦略目標になります。

3-3.ニッチャーが採用するべき基本戦略

ニッチャーがとるべき戦略の基本的なイメージとしては、リーダーブランドを始めとした競合ブランドが参入してこないような、あるいは参入をためらうような独自の王国を建設することです。
そして、その一種の別空間の中で、少数精鋭でありながらも高い利益率を得られる居場所を作り上げることになります。

真のブルーオーシャン(=無競争市場)を作り出し、その市場内でのブランドイメージをキープし続け、高利益率を確保することが目的です。
そのため、マーケティングの4P(商品Product、価格Price、流通Place、広告宣伝・販売促進Promotion)のそれぞれを差別化するだけでは足りず、競合ブランドが思いつかないようなセグメンテーション(=市場の細分化)を行うことで、生存空間全体の差別化を図ることが必要になります。

そして、そのニッチ市場に独自の経営資源を集中投入して、圧倒的な差別化を図るのです。
このニッチャーブランドがとる王道の基本戦略を「単一ターゲットアプローチ」と呼んでいます。
この単一ターゲットアプローチによってニッチ市場でのブランド価値が高まれば、前述のように、高い利益率を誇り、安定した売上げを上げることができ、激しい競争にさらされずにマイペースで成長し続けていけるなどの大きなメリットが得られます。

しかしながら、大きなメリットが得られるということは、そのポジションに立つための努力はけっこう大変です。
趣味や嗜好に強いこだわりを持つ特定のマニアなお客様たちをターゲットとする以上は、当然ながら、通常よりも高いレベルのクオリティーを期待されるからです。

その強いこだわりや期待に応えるために、マーケティング4Pのそれぞれはかなり高いレベルでの仕上がりと独自の価値を追求していかねばなりません。
商品(=製品・サービス)作りに一切の妥協は許されないものと考えるべきでしょう。

高利益率・高単価の商品をお客様が購入して下さるということは、その分、完璧な商品作りが求められているからこそということを忘れないようにしなければなりません。
したがって、マーケティング4Pの組み立てについては、特定の狭い範囲のターゲット顧客のニーズに対して精密にフィットして満足させられるようなファイン・チューニング戦略が基本になります。

具体的には、➀製品(Product)は、強いこだわりを持つ特定のこだわり客のニーズを満たすような独自性の高い価値あるものを作り、提供するようにします。
製品ラインは同種の製品のアイテム数が多いという意味での狭くて深いライン構成にすることで差別化を図ります。
靴下専門店の商品構成などが参考になりますね。

まさに、特定の狭いターゲット層を満足させるためだけに経営資源を集中投入するといったイメージです。

➁価格(Price)は、高めに設定します。
安易な値引きも、特別セールも基本的にはしません。
特定の狭いターゲット層だけが収益源になりますので、十分な利益を確保できるように価格は高めに設定するべきだからです。

また、こだわり客のニーズをしっかり満たすような商品作りをするためには、フルオーダーメイドに近い手間暇をかける必要があるため、その分だけ費用がどうしてもかかるからです。
さらに、安易な値引きはブランドイメージを低下させることにつながるからです。

➂流通(Place)は、特定のこだわり客だけに商品が届くようにすれば良いので開放型チャネルである必要はなく、閉鎖型チャネル戦略をとることになります。
店舗販売であれば、直営店のみの販売か、あるいは、ごく限られたライセンス店での販売といった閉鎖型の流通形態をとることになります。

もし高級外車が街のディスカウント店で売られていたとしたら、ちぐはぐ感が否めませんよね。
ブランドイメージをきちんと守っていくためにも、それにふさわしい流通ルートを作り上げる必要があるのです。

➃広告宣伝・販売促進(Promotion)も、特定のこだわり客にブランド側のメッセージがきちんと届けば良いので、広告媒体などの絞り込みが必要になります。
特定のこだわり客やその人に影響を与え得る人々が目にするような広告媒体を絞り込み、そこに予算を集中投入するようにしましょう。

ただし、注意点としては、どこまでもブランドイメージを守りぬく必要があることです。
つまり、売れ行きが好調であっても、希少感を維持するためにあえて売らない戦略をとることも必要です。

売れそうだからといって大量生産をして希少価値を下げてしまっては、せっかく積み上げてきたブランドイメージを低下させることになりかねないからです。
2つ目の注意点としては、特定の狭いターゲットセグメントだけを狙うからといって、視野が狭くなってはいけないということです。

常に業界全体への目配りをしていないと、高級路線でイメージされていたはずの自社ブランドが、より高級品を投入してきた競合が現れると、それとの比較で中程度の品質しかないものというふうに、顧客の中でのイメージが格下げされてしまう危険があるからです。

いつの間にかブランドイメージが没落していたということがないように、常に業界全体への目配りをしながら、ターゲットセグメントに経営資源を集中するようにしていきましょう。
ニッチャーブランドだからこそ、視野を広く持ちましょう。

以上が、ニッチャーブランドが採用すると良い基本戦略です。
ここまでの説明を参考にして、自社ブランドにふさわしい戦略を考えてみてください。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第22回)では、「競争地位別のとるべき戦略とは?(後編➁)」(フォロワーの基本戦略について)をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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