&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第20回)
「競争地位別のとるべき戦略とは?(中編②)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第20回目のテーマは、
「競争地位別のとるべき戦略とは?(中編②)」です。

それでは行ってみましょう!

_2.チャレンジャーブランド

前回(第19回)の記事では、チャレンジャーブランドの中でも「挑戦的チャレンジャー」がとるべき戦略についてご説明しました。
今回も引き続き、市場の中での競争地位(=ポジション)別にとるべき戦略についてご説明して参ります。

特に、チャレンジャーブランドについては挑戦的チャレンジャーと共存的チャレンジャーの2タイプに分けてご説明した方がご理解いただきやすいと思います。
そのため、前回と同様に、今回の中編➁では「共存的チャレンジャー」がとるべき戦略についてご説明して参ります(→ニッチャーブランドとフォロワーブランドについては次回(第21回)以降の記事でご説明する予定です)。

そもそも「チャレンジャー」とは、業界2〜3位の市場シェアを持ち、リーダーに挑戦できるほどの経営資産を持っているブランドのことでしたね。
このチャレンジャーには2つのタイプがあり、リーダーに対する姿勢の違いによって、挑戦的チャレンジャーと共存的チャレンジャーに分けられます。

「挑戦的チャレンジャー」とは、リーダーに追いつき追い越せの姿勢で、トップシェア奪取を目指した挑戦的な行動をとるブランドのことです。
これに対して、「共存的チャレンジャー」とは、リーダーとは争わずに共存共栄の戦略をとることで、潤沢な利潤を確保することを目的とした行動をとるブランドのことです。

便宜的に「チャレンジャー」との言葉が入っていますが、共存的チャレンジャーの場合にはリーダーに挑戦するような戦略は採用しません。
ここまでが前回(第19回)までの復習になります。

それでは、「共存的チャレンジャー」が採用すべき基本戦略とはどのようなものなのでしょうか?

2-4.共存的チャレンジャー戦略が成り立つ市場環境及び戦略目標とは?

共存的チャレンジャー戦略が成り立つ市場環境は、成熟期の後半から衰退期にかけて市場の成長の余地がほとんどない環境です。
市場の顧客のほとんどが類似商品を購入して使用した経験があり、商品そのものが市場全体に行き渡っていて、新たな顧客が増える見込みはほぼありません。

また、成熟期では、顧客は自分が選択するブランドを決めてしまっている場合が多いので、ブランドをスイッチする(=乗り換える)こと自体が少ないのです。
このような市場環境でブランド同士が激しい競争を展開しますと、互いが相手の顧客を奪い合う結果になってしまいます。

そうなりますと、類似商品同士で同質化(=品質・機能に差がない状態)が起こり、価格でしか差別化できない商品も出てくるため、低価格競争が巻き起こります。
低価格競争では、各ブランドが疲弊するばかりで誰も得をしないという最悪の状況が生まれます。

新たな顧客が増えない以上は、リーダーブランドの顧客を奪取するような戦略をとったところで得るものは少ないどころか、リーダーブランドもチャレンジャーブランドも共倒れする可能性があります。

その上、リーダーブランドの顧客を奪取して市場シェアトップに立つには、リーダー企業以上に生産設備を増加させ、商品の供給能力をアップさせる必要があります。
そうしますと、市場全体で新規の顧客が増えないにもかかわらず、供給能力の方は過剰になり、どの企業も工場の稼働率を高めるために無理な値引きを行いやすくなってしまいます。
これによって全企業が赤字体質になり、構造不況業種と呼ばれる業界になってしまいます。

したがって、リーダーに挑戦できるポジションにいるチャレンジャーだからと言って、成熟期の市場のような新規顧客が増えない環境では、シェア争いをしないほうが得な場合もあるといえます。
多くの市場環境を見ておりますと、むしろリーダーと共存共栄しながら身の丈にあった利潤を確保していく生き方の方が適切なケースが多いように思います。

そのため、チャレンジャーの別の生き方として、挑戦的チャレンジャーではなく、「共存的チャレンジャー」として生きていく方針が考えられます。
「共存的チャレンジャー」とは、リーダーとシェア争いをすることなく、上手い具合に棲み分けて共存共栄の姿勢をとりながら、潤沢な利潤の確保と業界全体の安定を戦略目標とする生き方です。
つまり、不毛な戦いを避け、名よりも実をとる戦略目標と言えるでしょう。

では、以上の戦略目標を実現するために共存的チャレンジャーが採用するべき基本戦略にはどのようなものが考えられるのでしょうか?
共存的チャレンジャーの基本戦略としては、①差別化戦略、②暗黙の協調路線戦略、③供給減少戦略の3つがあり、これらを組み合わせて戦略目標を達成するのが良いでしょう。

以下、それぞれを具体的にご説明していきます。

2-5.共存的チャレンジャーが採用するべき基本戦略➀~差別化戦略~

新規の顧客が増えない市場環境の中で同じ顧客をめぐってリーダーと正面衝突をすることは互いに不毛な戦いに陥ってしまうことから、それを避ける必要があります。
したがって、共存的チャレンジャーはリーダーと差別化し、うまい具合に棲み分けをすることが基本戦略になります。

具体的には、ターゲット市場の選択については、リーダーが主戦場としているセグメントとは異なるセグメントを選んで、そこに経営資源を注力することです。
つまり、リーダーの縄張りにはなるべく立ち入らないようにすることです。

あるいは、同じセグメントの中でリーダーと共存せざるをえない場合にも、正面衝突を避けるために、マーケティングの4つのP(製品Product、価格Price、流通Place、広告宣伝及び販売促進Promotion)のうちの価格以外の全部、あるいは、いずれかで差別化を図ることで棲み分けるようにします。

また、新規顧客の獲得は難しくても、売上高自体を維持するために、できれば高付加価値化の方向で差別化をしたいものです。
つまり、高付加価値化により価格を高く設定してターゲット顧客に売るのです。

例えば、洗濯乾燥機の日本市場はだいぶ前から成熟化しており、新規顧客が増える見込みはほとんどありません。
各家庭に洗濯機や乾燥機などがほぼ行き渡っている状態だからです。

そこで、各家電メーカーは低価格競争による泥沼化を避けるため、洗濯乾燥機に特色ある機能を搭載させるといった高付加価値化を図ることで差別化し、棲み分けています。
つまり、斜めドラム式や冷風エアコン機能付き、ヒートポンプ斜めドラム式などといった差別化が行われています。

そのため、通常タイプの洗濯乾燥機が数万円の価格であるのに対し、高付加価値化によって差別化された洗濯乾燥機では、20〜30万円もの高い値段で売ることができています。

このように、成熟市場にあっても、特色ある差別化を図ることでリーダーと棲み分けることができ、自社のブランドに魅了された固定ファンを獲得することによって生き残ることができるのです。

2-6.共存的チャレンジャーが採用するべき基本戦略➁~暗黙の協調路線戦略~

共存的チャレンジャーとして生きていく上でポイントになるのは、欲を出してリーダーの顧客を奪うようなことはせず、自らの顧客をしっかり囲い込むのに集中するべきということです。
リーダーの顧客を奪うような真似をすれば、当然ながらリーダーも反撃してチャレンジャーの顧客を奪いに来てしまい、不毛な戦いが展開されることになるからです。

例えば、価格引き下げを行う場合であっても、ブランドの乗り換えによって相手の顧客を奪わないように配慮する必要があります。
そのためには、従来からの自社の顧客の買い替えには、低い価格を設定して引き続き囲い込むようにします。

他方、リーダーの顧客によるブランドスイッチには値段を高く設定します。
オフィス用カラーレーザープリンターの分野においてよく採用されている手法です。

こうした価格設定を工夫することによって、互いに相手の顧客を奪わないで済み、それぞれの顧客を囲い込むことを可能にし、共存共栄の道が開かれるのです。
暗黙の協調路線と言えるでしょう。

2-7.共存的チャレンジャーが採用するべき基本戦略➂~供給減少戦略~

前述のように、新規顧客が増えない成熟市場でシェア争いをすると、業界全体が過剰生産設備を抱えた過当競争によって赤字体質化してしまう危険があります。
そのため、業界全体の工場数や生産ラインを増やして供給能力を増大させる方向の手段は取るべきではありません。

逆に、市場全体の顧客数の減少に合わせるように、生産設備が適正な量になるように調整し、業界全体の供給能力を減少させる戦略を取るべきです。
いわば状況変化に柔軟に合わせた断捨離ですね。

したがって、共存的チャレンジャーは、リーダーブランドや業界全体の競合ブランドの動向を注意深く見ながら、自社ブランドの市場への供給量を丁寧に調整していく戦略をとりましょう。

以上が、共存的チャレンジャーが採用すると良い基本戦略です。
ここまでの説明を参考にして、自社ブランドにふさわしい戦略を考えてみてください。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第21回)では、「競争地位別のとるべき戦略とは?(後編)」(ニッチャー/フォロワーの基本戦略について)をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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