&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第25回)
「ブランドの理想像をどのように設定したらよいのか?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第25回目のテーマは、
「ブランドの理想像をどのように設定したらよいのか?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.ブランドの理想像を設定すべきなのはなぜか?

価値あるブランドを創り出すには、戦略ブランディングによってブランドの価値を鮮明化し、それを世の中の人々に広く知ってもらい、かつ、理解してもらえるように活動していきます。
具体的には、創業者の想いにまでさかのぼってブランド価値の源泉を掘り起こし、それを磨き上げて鮮明化していく必要があります。
そのために、ブランドの理想像を設定して、そこに向かって全社員がブランディング活動を行っていくのです。

そもそも、「戦略」とは、現在地と理想のあるべき姿(=目標地点)を結ぶルートを考え、それに必要な人員と予算を配分する地図や計画表みたいなもののことです。
そのため、ブランディングを戦略的に行うためには、まずは現在地を把握することと、同時に、理想のあるべき姿(=目標地点)を設定しなければ始まりません。
したがって、ブランディング活動を始めるときには、ブランドの理想像を設定しておく必要があるのです。

それでは、ブランドの理想像とはどのようなものなのでしょうか?
ブランドの理想像とは、そのブランドが他者にはない独自の価値提供をすることができている状態のことをいいます。
ブランドとは本来、他者とは差別化された独自性ある価値のことをいうからです。
そして、独自性ある価値を持ったものを広く知ってもらい、かつ、理解してもらう活動のことをブランディングというからです。

つまり、ブランドの理想像を設定することとは、ブランドの提供価値を顧客に対して明確にすることです。
そのために、現状のブランドが抱える課題を把握して、成功までの戦略を描き、そして、その先の克服した未来像を明確に設定します。

言い換えれば、理想の未来像とは、ブランドとして「どうありたいか」/顧客に「どう思われたいか」という2つの視点で共通のイメージを醸成し、それが合致した状態のことをいうのです。
ブランドの理想像の設定は、戦略を描くためにも、また、類似商品で溢れる成熟市場の中でその他大勢に埋もれない、選ばれる存在になるためにも必要なことなのです。

_2.ブランドの理想像を設定するための4つのポイントとは?

それでは、具体的にどのようにすれば、ブランドの理想像を設定することができるのでしょうか?
ブランドの理想像を設定することは、前述のように、独自性あるブランドの提供価値を明確にすることでしたね。
そうであるからには、独自性あるブランド価値は、誰にも真似されない領域から深掘りして掘り起こす必要があります。
それはどこに眠っているのでしょうか?

実は、独自性あるブランド価値の源泉は、創業者の原体験にまで遡ったストーリーに眠っているのです。
全く同じ環境で、全く同じ行動をし、全く同じ経験をした上で、全く同じ想いを持っている人はいないからです。
創業者の原体験にまで遡って、そのブランドに込められた想いを深掘りし、どんな想いで、どんな未来像や理想像を実現するために、創業者がそのブランドを生み出したのかを考えましょう。

そうすれば、そのブランドが本来目指したかった理想像を見つけやすくなるはずです。
理想像が見つかったら、創業者の原体験から始まる理想像が生まれたプロセスについて、ターゲット顧客の共感を呼ぶようなストーリーの形にしてみましょう。
ストーリーが出来上がったら、それが正しくブランドの理想像の設定になっているかを判断するための4つのチェックポイントがありますので確認してみてください。
以下で、1つずつチェックポイントを見ていきましょう。

2-1.ブランドの理想像には自社の強みや個性が表れているか?

ブランド価値は、他社と差別化された有益な価値あるものである必要があります。
そのために、自社の強みや個性を掘り起こし、それを磨き上げて鮮明化してこそ、顧客の強い共感を呼ぶことができるのです。
いわゆる良い意味での差別化ができている必要があります。

2-2.顧客から見て有益な価値と認められるものか?

そのブランドに有益な独自性ある価値があるかどうかを判断するのは、売り手ではなく、あくまで買い手である顧客です。
当たり前ですが、類似商品で溢れる成熟市場では、そのブランドを選ぶかどうか、購入するかどうかの最終決定権は顧客にあるからです。
健全な成熟市場では消費者に主権があると言って良いでしょう。
そのような市場環境の中では、顧客がそのブランドに有益な価値があると認めるからこそ、数ある類似商品の中から選ばれる存在になり、ブランドと呼ばれる存在になるのです。

では、「価値」とは具体的にどのようなものを言うのでしょうか?
顧客が感じるブランドの「価値」とは、実は商品そのものにあるのではありません。
その商品を購入して所有し、利用・活用することを通して得られる体験価値及び欲しい未来の実現にあります。

例えば、全自動洗濯機が登場した時のように、その機能性によって洗濯にかかる時間が大幅に短縮され、その分余暇ができたこと、その余暇を楽しめることが体験価値になります。
また、高級ブランドバッグを購入した時のように、それを身に付けて街中を歩くと高揚感を感じます。ステータス感を感じると言ってもいいですね。
こちらも高級ブランドバックの購入者が欲しかった未来像であり、体験価値なのです。

さらには、砂漠に植林事業を行っている企業のブランドを購入することで、自分も地球環境の役に立つことをしているのだという社会的な意義を感じられることも、ブランドが提供する価値になります。
このような体験価値や欲しい未来の状態のことをベネフィット(便益)といい、目に見えない利益になります。
このベネフィット(便益)のことをブランドが提供する「価値」と言います。

もう少し具体的に説明しますと、ブランドの「価値」には3種類あって、①機能的価値、②情緒的価値、③自己表現的価値に分かれます。

①機能的価値とは、機能、性能、品質など、理性に訴えかける便益のことです。
例えば、速い、軽い、丈夫、便利、長持ちなどを顧客が理性によって感じられる価値になります。

②情緒的価値とは、そのブランドを利用したり、サービスを体験したりすることによって、幸せな気持ちになるといった感情に訴えかける便益のことです。
例えば、ワクワク感や楽しい気持ち、かっこいいと思える気持ち、高級感や安定感などといった感情になることが顧客が感じる便益になります。

最後に、③自己表現的価値とは、そのブランドを購入して利用・活用することで自己表現をしていると思える満足感や、望んだ理想像を実現できているといった達成感などのプラスの感情を抱く価値になります。
例えば、自分の憧れの世界観を表現しているブランド(例えば、好みのブランドのパソコンなど)を購入して仕事をすることで、その世界観を身にまといながら仕事をする自分という自己表現手段にブランドがなっていることです。
また、憧れの女優が身に付けている高級ドレスや靴を購入して身にまとうことで、自分もその憧れの女優に近づけたといった自己実現感などが典型です。

以上のように、独りよがりでなく、本当に顧客にとって有益な価値が感じられるものになっているのかをしっかりチェックしましょう。
顧客に受け入れてもらえないブランドの理想像を設定しても、それは選ばれる存在にはなれないでしょうから。

2-3.ブランドの理想像は、誰にでも分かりやすく、社内外の人々に共感してもらえるか?

そのブランドを選択して購入するかどうかを最終的に決めるのは顧客である以上、そのブランドの存在や提供している価値を顧客に理解・納得・共感してもらえるようにする必要があります。
ブランドの理想像を語るストーリーが専門用語やカタカナ語が多くて、多くの人に分かりにくかったり、不愉快な表現や社会倫理に違反するような表現の仕方をしているために全く共感できなかったりするのでは意味がないからです。

ブランドの理想像を設定するストーリーは、そこに込められたメッセージがターゲット顧客層に伝わって初めて生きるのです。
特にZ世代やα世代と言われる世代の人々は、子供の頃からデジタルな環境に囲まれて育ってきているため、分かりにくいものや共感しにくいものを瞬時に判断する能力に長けています。
そういったメッセージからは瞬時に離脱してしまうのです。
したがって、ブランドの理想像は、誰にでも分かりやすく、かつ、社内外の人々に共感してもらえるようなものに設定しましょう。

2-4.教科書的なきれいな言葉の羅列になっていないか?

批判や非難を受けるようなブランドの理想像の設定はもちろんいけません。
それは理想像ではなく、ブランドの価値を損なうものになってしまうからです。
ただし、批判を恐れすぎて、誰もが言えるような当たり前の、教科書的なきれいな言葉の羅列だけでブランドの理想像を設定してしまいますと、全く独自性のないありふれたものになってしまいます。
そこには有益な差別化などはありません。
選ばれないブランドになって、悲しいことに朽ち果てていくことになるでしょう。

そもそも、これだけ成熟市場になってきますと、顧客の側もありふれた、当たり前のきれいな言葉には飽き飽きしているのです。
もちろん、注意を引きたいために、過激で乱暴な言葉でブランドの理想像を設定した方が良いとは言えません。
それはリスクが大きすぎますし、社会倫理にも反するでしょう。

この④のチェックポイントで伝えたいのは、ありふれた、それらしい言葉で表現して終わるのではなく、そのブランドの価値を深掘りして得られた「らしさ」を表す言葉によってブランドの理想像を設定するべきだということです。
そのため、ブランドの理想像を設定する場合には、他者にはない差別化された価値を表すキーワードを掘り起こし、それを分かりやすい形で(できれば、斬新な形で)表現すると良いでしょう。

_3.ブランドの理想像を設定する際に注意するべきポイントとは?

せっかく目指すべきブランドの理想像を設定しても、会社の強みや個性を活かし切れないようなものでは実態が伴っていないものになってしまいます。
つまり、仏作って魂入れずという言葉がふさわしいような、効果のないものになってしまいます。
あくまで、ブランドの強みや個性を活かして、現在の実力から実現可能なものに設定しなければならないことに注意しましょう。

また、ターゲット顧客のニーズに合わせた理想像であることはもちろん必須なのですが、それが創業者の原体験から来る想いと違いすぎるものになりますと、やはり顧客から見てちぐはぐな印象が生まれてしまいます。
その場合には、ターゲット顧客層の見直しも併せて考えた方が良いでしょう。
あくまで創業者の想いに沿ったブランドの理想像であってこそ、ブランドが打ち出すメッセージの整合性や統一感が担保され、顧客が理解・納得・共感しやすいイメージを持てるのです。

さらに言えば、欲に目がくらんで、実態が伴っておらず、詐欺みたいな理想像は、顧客からの共感を全く得られずにブランドの価値を損なうだけでなく、社会倫理的にも許されるものではないことに注意しましょう。
やはり、ブランドの理想像を語るストーリーにも一定の倫理観は必要なのです。
その倫理観の枠内で理想像を設定するからこそ、ターゲット顧客層のみならず、社会の幅広い人々から支持され、長続きするブランド価値になっていくことができると言えます。

まとめますと、以上のような注意点に反するブランドの理想像の設定は、そのブランドの「らしさ」を表すものではなくなってしまいます。
したがって、ブランドの理想像の設定は、誠実であり、社会倫理にもかなった中身のあるものにして初めて、「らしさ」が生まれてくることに注意しましょう。
バランスのとれた、多くの顧客から信頼されるような良い理想像の設定をしていきましょう。

なお、現代の成熟市場では、激しい競争を繰り返す中で商品の同質化が進み、機能的価値だけでは差別化をすることが難しくなっています。
そのため、情緒的価値や自己表現的価値により重点を置いたブランドの理想像の設定が大切になってきていることにも注意を払うと良いでしょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第26回)では、「ブランド価値をどのように伝えると効果的なのか?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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