&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第24回)
「ポジショニングの大切さとリブランディング」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第24回目のテーマは、
「ポジショニングの大切さとリブランディング」です。

それでは行ってみましょう!

_1.ポジショニングの大切さ

限りある経営資源を有効活用して、ターゲット層の顧客ニーズを満たすような商品を開発・提供するためには、セグメンテーション(=市場細分化)→ターゲティング(=ターゲット層の決定)→ポジショニング(=顧客の頭の中の位置づけ操作)の順番で戦略を考えていく必要がありました。
また、市場の中での競争上の地位によってとるべき戦略も変わってくるのでしたね(→第22回までの記事を参照)。

ブランディングを行う上でとても大切なことは、他のブランドと差別化された独自性ある価値を深掘りして鮮明化し、世の中の人々に広く知ってもらうことです。
つまり、他のブランドと差別化して、顧客から選ばれるブランドになる必要があるのです。

それでは、「差別化された」というのは誰が決めるのでしょうか?
日本のような成熟市場では今や類似商品で溢れています。
その数ある類似商品の中で自社ブランドが差別化されているかどうかは、顧客の頭の中にある相対的な比較イメージで決まります。

どんなに品質の良い商品を開発・提供できたとしても、顧客の頭の中でその存在が具体的にイメージされていなければ意味がありません。
顧客の脳の記憶容量には限界があり、あるいは、誤った情報による思い込みや、偏った認識がなされることもあり得ます。
そのため、差別化された自社ブランドを顧客に正確に認識してもらうことが大切になります。

つまり、実際に良い品質の商品を開発・提供することはもちろん大切なのですが、それだけでなく、「この商品は品質が良い」と顧客が頭の中で具体的にイメージしてくれるようにすることが大事なのです。
したがって、ポジショニングとは、いかに自社ブランドの価値やイメージを顧客の頭の中に位置づけるかを操作することをいい、選ばれるブランドになるためにはとても大切な取り組みになります。

操作するというとちょっと言い方が悪いかもしれませんが、売り手側が意図したイメージである「こう見られたい」を顧客の頭の中のイメージと一致させていくための取り組みのことだと考えてください。
もし売り手側が意図したイメージと顧客の実際の頭の中のイメージとが一致していない場合には、ポジショニングを変更して、顧客の頭の中のイメージが売り手側の意図したものになるように操作する必要があります。

例えば、キャッチコピーなどの言語的な要素の内容を変更したり、キー・ビジュアルなどのデザイン的な要素の内容を変更したりして、売り手側が意図したイメージになるようにポジショニングの修正を行っていきます。

ちなみに、ブランドのポジショニングが適切でなくなっているのを見直して再活性化することを「リブランディング」と呼んでいます。

例えば、男性用肌ケア製品の「SEA BREEZE(シーブリーズ)」は1960年代に日本に上陸して以来、「海に遊びに行く20~30代の男性」をメインターゲットとしていましたが、海水浴客の減少に伴い、長い間売上げが低迷していました。
そこで、改めて綿密な市場調査を行い、メインターゲットを「部活後に彼氏に会いに行く女子高生」に変更したのです。

ターゲットの変更に伴って、ポジショニング変更も行われ、テレビCMなどでは女子高生から親しまれやすい旬の同年代の女性タレントを起用し、また、パッケージングも女性ウケする可愛らしいデザインに変更されました。
このリブランディングにより、長く低迷していたSEA BREEZEの売上げは復活し、再び人気商品になりました。

また、別のリブランディング成功事例としては、スーパーマーケットチェーンを展開している西友の取り組みが挙げられます。
かつては小売店が展開するプライベートブランド(PB)は低価格・低品質なもので「安かろう、悪かろう」のイメージが顧客にすっかり定着してしまっていました。

その後に懸命な商品開発努力によって品質自体は向上したものの、一度顧客の頭の中に刷り込まれてしまったイメージからの脱却を図ることが現実的な課題になっていました。
そこで、西友は全商品の消費者テストを行い、消費者から70~80%の支持を得られたPB商品を開発・提供することにしたのです。

具体的には、PB「みなさまのお墨付き」シリーズを発売することにしました。
西友は、従来のPBを「みなさまのお墨付き」シリーズにリブランディングすることによって、「気軽に使えて品質が良い」というイメ―ジへ転換させることに成功しました。

つまり、顧客の頭の中のイメージを操作して、「安かろう、悪かろう」の悪いイメ―ジから「気軽に使えて品質が良い」という良いイメージへとポジショニングを変えることに成功したのです。
その結果、西友のPB「みなさまのお墨付き」は大人気商品になりました。

_2.ポジショニングマップの活用

ポジショニングの大切さをご理解いただけたと思いますので、次に適切なポジショニングを考えるための簡単なツールをご紹介します。
自社の強みを活かして競合との差別化をどういった点で図るかについて、分かりやすく見える化できた方が考えるのに便利ですよね。

そこでご紹介したいのが「ポジショニングマップ」の活用です。

1枚の紙を用意して、縦軸と横軸の2つの軸を書き込み、4つのゾーンに区分けします。
区分けするための2つの軸は、商品の機能的特性や情緒的特性といったもので条件を設定すると良いでしょう。

例えば、1つの軸の条件を商品の機能的特性で設定したとしますと、商品が持つ機能や品質、ターゲット層の属性などが条件の内容になります。
そして、強い/弱い、大きい/小さい、多い/少ない、濃い/薄いといったものが軸の両方の端に書かれることになります。

他方、情緒的特性を軸の条件とする場合には、ターゲット顧客の心理的な要素が主な内容になりますので、親しみやすさや高級感、シンプルさ、ファッション性、おしゃれ、爽やかさ、安心感、革新性などといった評価内容になります。
軸の条件になるものの例としましては、他にも、場所や生活シーンであったり、デモグラフィック的属性(年齢・性別などの人口統計的な属性)であったり、朝、昼、夜などの時間を条件の内容にしたりすることも考えられます。

自社の強みと顧客ニーズ、そして競合の強みを多面的に分析した上で、適切な条件を選んで軸を設定したら、自社ブランドを他社ブランドがいない領域に置いてみます。
そして、適切なポジショニングによる差別化を図ることによって、その領域内に存在する競合をどうやって追い出すかを考えるようにするのです。

適切な差別化要素を見つけ出して、競合を自分のポジションの領域内から追いやった状態にすることができれば、差別優位性があることを視覚的に理解することができます。
言わば、ターゲット層の顧客が重視する自社ブランドの強みはどこかを視覚的に表現できるツールなのです。

また、社内のメンバーにこれから展開していく予定のブランド戦略を分かりやすく伝えられるというメリットもあります。

ただし、いくつか注意点もあります。

1つ目の注意点は、軸の条件の内容をミスしてしまいますと、差別化要素をうまく表現できないことになってしまいます。
例えば、品質と価格を2つの軸の条件の内容に設定したとします。
一般的には品質が高くなると価格も高くなるという正比例の関係にありますので、品質と価格を軸とするのでは差別性が発揮されるような組み合わせにはなりません。

この場合は、品質と利便性といったように、差別性が発揮されるような軸の組み合わせを考えることが大切です。
特に機能的特性だけでは、競争が激しくなると同質化が進んで差別化要素にはなりえなくなりますので、情緒的特性に重点を置いて差別化を図る方向で考えた方が良いでしょう。

2つ目の注意点としては、尖った差別化要素にするために軸の条件の内容を細分化しすぎて(絞りすぎて)、ターゲット層の母集団が少なくなってしまうことがあります。
やはり、一定数以上の顧客が見込めなければ売上げにはなりませんので、軸の条件の内容を絞りすぎないことが大切です。

3つ目の注意点としては、競合ブランドと差別化を図ることに頭が行き過ぎて、顧客ニーズを無視した独りよがりな差別化を行ってしまうことです。
差別化されているかどうか、それが有益な差別化かどうかを決めるのは、あくまでターゲット顧客です。
顧客ニーズを置き去りにした差別化を図っても意味がありません。

4つ目の注意点としては、強力なブランドの存在感に引っ張られて、結果的にそのブランドの真似を行ってしまうことで、独自性が失われてしまうことがあります。
強いブランドの個性に吸引されてしまい、こちらのブランドが没個性になってしまうといったイメージでしょうか。

ポジショニングの目的は顧客の頭の中に差別化された独自性あるイメージを構築することにあります。
強いブランドに引っ張られることなく、ポジショニングの目的である差別化が図れるように、独自の価値を深掘りして商品開発・提供に活かすようにしましょう。

_3.リブランディングによってブランドを生き返らせよう

自社ブランドの売れ行きが思わしくなかったり、あるいは、低迷してきている時には、何とかテコ入れしたいものですよね。
特に、かつては売れ行きが好調だった自社ブランドが低迷してきている場合には、テコ入れのやり方次第で復活できる可能性があります。

自社ブランドの低迷は、一度確立したブランド価値が市場の変化や競合との激しい競争にさらされることによって、ニーズへの適応力やコスト競争力を維持することができなくなっている可能性があります。
そのため、テコ入れの課題は、現在のブランド価値をいかに維持し、あるいは強化していくかということになります。

自社ブランドの低迷や衰退はブランドのポジショニングが不適切なものになってしまっていることを意味していますので、それを見直して再活性化させる必要があります。

そこで、ブランドの目指す姿を見直して再構築する「リブランディング」を行います。

具体的には、ブランド価値が正確に伝わっていない場合や、現在ブランドが持っている価値だけでは競合ブランドに勝てない場合などにリブランディングを行って、ブランドの再活性化を図ります。
ブランド価値が顧客に伝わっていない場合には、訴求ポイントや伝えるための媒体が適切ではないことが考えられます。

また、社内での経営資源の配分先としての優先度が低いという社内事情が原因である場合もあります。
さらには、長い歴史を持つブランドの場合には、リブランディングを繰り返すうちに本来持っているべき価値を見失ってしまい、最も根幹となる価値が忘れられてしまっていることに原因がある場合もあります。

本来維持すべきブランドの中核的な価値(=良い意味での伝統)をしっかり見直して、ブランドを再構築していく必要があるのです。
創業者の想いにまで遡る原点回帰をするのがリブランディングには有効です。

そしてもし、現在持っているブランド価値だけでは競合に勝てない場合には、顧客から現在求められているニーズ(価値)を明文化して、従来の価値にプラスして求められているニーズに答えられるようなリブランディングを行っていきましょう。

結論として、リブランディングを適切に行えば、低迷している自社ブランドを再活性化させ、復活させることも可能なのです。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第25回)では、「ブランドの理想像をどのように設定したらよいのか?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

ブランディングスタートパック
開始
3ヶ月でブランドの基礎を創ります

前の記事

次の記事

[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

BACK