&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第4回)
「ブランディングと価格プレミアム・企業価値の関係とは?(前編)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第4回目のテーマは、
「ブランディングと価格プレミアム・企業価値の関係とは?(前編)」です。

それでは行ってみましょう!

_1.値下げをすることのリスクとは?

アメリカ合衆国や日本をはじめ、先進国の市場の多くは、類似商品で溢れかえっている成熟市場の状況にあります。
そのような成熟市場の中で生き残りを図るために、各企業は試行錯誤しながらマーケティングやブランディング戦略に取り組み、自社の商品が顧客から選ばれ、購入されるように努力しています。

ただ、よくありがちな失敗例としては、値下げをして低価格競争に持ち込む戦略をとってしまうことです。
なぜ、多くの場合に値下げを繰り返す低価格競争が失敗に終わるのでしょうか?
その理由は2つあります。

1つ目の理由としては、誰も得をしない血みどろの戦いが行われるため、どんどんじり貧になっていくからです。
低価格路線で競争することができるのは、一般的には、豊富な資金やネットワークといった経営資源に恵まれた大企業に限られる戦略です。
経営資源が不足しがちな中小企業の場合には、競合他社との値下げ競争という誰も得をしない戦いに巻き込まれ、働けど働けど楽にならないジリ貧の未来が待っています。

また、いちど値下げをして売ってしまいますと、顧客の頭の中ではその値下げをした価格がスタンダードとなり、次回からはお得感を感じなくなります。
そうなりますと、次回からも値下げをし続けていかないと顧客の購買心をくすぐることができなくなり、赤字になる日はそう遠くはありません。

2つ目の理由としては、安易な値下げをしてしまいますと、ブランドの信用を失い、その価値を傷つけてしまうことになるからです。

例えば、最寄りの紳士服店で50,000円のスーツを昨日購入したとしましょう。
ところが、次の日にその紳士服店の前を通ったら、昨日購入したスーツと同じタイプのものが半額の25,000円で売られていたとしたら、顧客はどう思うでしょうか?
多くの顧客はがっかりした気持ちになると思います。
「次の日から半額にするのであれば、購入する時にそのことを言ってくれればよかったのに…。」という気持ちになるのではないでしょうか。

その気持ちが販売員やそのお店に対する不信感になっていくのは自然な流れですね。
これが値下げをすることの2つ目のリスクになります。

逆に、高級バッグなどで有名な世界的一流ブランドのルイ・ヴィトンは、値下げ販売や特別割引セールなどを一切しません。
値下げをする戦略は自社商品のブランド価値に傷をつけ、既存顧客からの信頼を失ってしまうことをルイ・ヴィトンはよく理解しているからです。

そもそも、値下げをしないと売れないということは、その商品の価値が元の価格に値しないものであったことを自ら証明するようなものだからです。
つまり、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドにとっては、値下げをせずに価格を維持することも自社のブランドを守るための戦略の一環なのです。

このように経営資源が不足している中小企業にとって、低価格競争に陥るような値下げ戦略をとることは得策ではありません。
待ち受けているのは、消耗し尽くしてジリ貧に追い込まれる未来だからです。
したがって、低価格競争に巻き込まれないために重要なのは、「価格」ではなく、どのような「価値」を求めてお客様はやってくるのかを考えることです。

_2.価格プレミアムとは?

それでは、自社の製品やサービスにどのような「価値」があれば、低価格競争に巻き込まれずに、顧客から選ばれ、購入されるようになるのでしょうか?
ここで具体例として、スターバックスとそれよりも低価格な100円安いコーヒーを売るAコーヒー店との違いを考えてみましょう。

使用しているコーヒー豆の品質やカップのサイズ、サービスなどには大きな差はないとします。
もちろん、Aコーヒー店を選ぶ顧客層もいますが、100円高いコーヒーを売っているスターバックスにも顧客がたくさん来店しています。
なぜ、スターバックスのコーヒーの方が100円も高いのに多くの顧客層から選ばれるのでしょうか?

それはスターバックスが顧客に提供している「価値」が理由です。
「ゆったり落ち着いていて、都会的なセンスを感じる店内でスターバックスのコーヒーを飲んでいるというステータス感」
「バリスタが淹れるコーヒーの品質」
「完全禁煙であり、清潔感と開放感がある店内環境」

スターバックスが提供しているこれらの仕掛けに対して顧客は「価値」を感じ、そのために顧客は少々高い代金を払ってでもスターバックスを選ぶのです。
したがって、顧客がスターバックスに感じている「価値」こそが、スターバックスという「ブランド」の価値になります。

つまり、提供する商品がほぼ同じ品質であるにもかかわらず、多くの人がより多くの代金を払う「価値」があると考える理由こそが、「ブランド価値」なのです。
言い換えれば、「ブランド価値」とはそのブランドによってもたらされる経済的な価値のことです。

スターバックスの例で言えば、Aコーヒー店との差額である100円という金額こそがスターバックスの「ブランド価値」といえます。
強いブランドにはこの「ブランド価値」があります。

なお、強いブランドが提供しているブランド価値に対してならば、同種・同等の他社の類似製品やサービスよりも代金を多く支払ってもいいという金額のことを「価格プレミアム」と呼んでいます。

_3.ブランド価値を生み出すのはブランドへの共感

では、優れた「ブランド価値」を生み出す強いブランドになるためにはどうしたら良いのでしょうか?
そもそも「ブランド」とは、経営理念のもとに今まで積み重ねてきた企業の歴史・活動など、他社とは違う独自の価値をもったもののことです。
また、「ブランディング」とは、ブランド+ing、ブランドを未来に向けて進化させ続ける行動のことを言います。

具体的には、他社の商品とは異なる独自の価値を持った「ブランド」を作り出し、それを広く知ってもらい、納得・共感してもらう活動のことです。
ブランディングの目的は、「ブランド」の言葉の由来である「焼印をつける」の通り、他社の商品と差別化を図ることです。
また、独自の価値や世界観をブランドとして提供して顧客の納得・共感を得ることで、お客様をファン化することです。

そうしますと、お客様をファン化してビジネスを長期的な成功に導くために必要なのは、「ブランドへの共感」を呼び起こすことです。
そのため、ブランドへの共感を獲得するために、他社とは差別化された自社ブランドの確固たる理念や信念、価値観を打ち出すことが大切です。
そして、理念や信念の具体化としてのミッション(企業として果たすべき使命)を掲げ、ターゲット顧客層にアピールしていきます。

具体的には、「ブランドが存在するのは何のためなのか」、「そのブランドが企業としてのミッションを果たす存在なのかどうか」を明確に示すことが重要になります。
逆に、古今東西の企業の栄枯盛衰を見ていますと、確固たるブランドの理念や信念、価値観を持っていないブランドは、顧客からの共感や強い支持を得られず、短命に終わってしまうことがほとんどです。

なお、ブランド価値を高めて顧客からの強い支持や共感を得るためには、継続した努力を積み上げていく必要があります。
その際に注意しなければならないのは、「信頼を得るには長期間の継続した積み上げ努力が必要だが、失うのは一瞬である」ということです。

有名な自動車会社製のトラックによる脱輪事故が相次ぐという不幸な事故が過去にありました。
会社側の構造的な過失が報じられ、短期間で信用を失墜させてしまいました。

また、食品の産地偽装、異物混入という問題も度々起こっています。
その会社の先人たちが、せっかくコツコツとブランディングをして積み上げてきた顧客からの信用も、一時の過失によって一瞬にして崩れ去ってしまうケースがよく見られます。
したがって、ビジネスを長期的な成功に導くためには、信用を一瞬にして失う危険性に常に注意を払いながら、強いブランドを育てていくための継続的な努力を行っていく必要があるのです。

ブランド価値を生み出すのはブランドへの共感ということを常に念頭に置きながら、各種のブランディング活動を展開していきましょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第5回)では、「ブランディングと価格プレミアム・企業価値の関係とは?(後編)」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

ブランディングスタートパック
開始
3ヶ月でブランドの基礎を創ります

前の記事

次の記事

[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

BACK