&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第5回)
「ブランディングと価格プレミアム・企業価値の関係とは?(後編)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第5回目のテーマは、
「ブランディングと価格プレミアム・企業価値の関係とは?(後編)」です。

それでは行ってみましょう!

_4.価格プレミアムを維持するにはブランド価値を向上させる努力を

後編のご説明に入る前に前回までのキーワードの意味について復習しておきましょう。
まず、「ブランド価値」とは、モノやサービスがほぼ同種・同等であるのにもかかわらず、多くの人がそのブランドにならばより多くの代金を支払うだけの価値があると考えることをいうのでしたね。

また、「価格プレミアム」とは、そのブランド価値に対してならばより多く代金を支払っても良いという、上乗せされる金額のことをいいました。

そして、ブランド価値が向上するからこそ、価格プレミアムがつくという関係にあるのでしたね。

復習できたところで、さて今回は、ブランディングと企業価値向上の関係についてご説明していきます。
まず、企業の経済的な価値を高めるための元になるものを「資産」といいますが、この資産にはどのような種類があるのでしょうか?
資産には大きく分けて、有形資産と無形資産の2つの種類があります。

土地や建物、設備等の形のある資産のことを「有形資産」といいます。
他方、技術力やノウハウ、顧客リスト、取引先ネットワーク、ブランド等の形のない資産のことを「無形資産」といいます。
そして、ブランド(ブランド価値)は、そのブランドによってもたらされる経済的な価値のことであり、形がないものであるため、無形資産になります。

重要なポイントとして、継続的なブランディングへの取り組みによって積み重ねられたブランド価値は、一度確立されますと、当面の間は価格プレミアムを維持し続けられるという大きな効果をもたらします。
そのため、ブランド(ブランド価値)は、企業の経済的な価値を高めるための重要な無形資産になっています。

そもそもブランドは、いわば「そのブランドらしさ」を表すもので、企業や製品・サービスに関する評判や信用という意味での1つの情報にしか過ぎません。
しかし、ブランドに関する様々な調査や研究によって、次第にブランド価値の正体が明らかになってきました(→具体的な説明については前回の記事をご覧ください)。

その結果、現在ではブランド価値こそがそのブランドによってもたらされる経済的価値の源泉であるという認識が広まってきたため、ブランド価値により一層注目が集まるようになってきています。
したがって、企業のブランド価値を高めるには、ブランディングに取り組む必要があると認識されるようになりました。

さらに、無形資産であるブランド価値を向上させて、価格プレミアムを維持することが企業の経済的利益に直結することから、それを実現するブランディングが事業戦略として非常に重要であると広く認識されるようになったのです。

_5.ブランディングの優秀さを判断するためのポイントとは?

コツコツと戦略的にブランディングに取り組むことがブランド価値を高め、ひいては企業の経済的価値を向上させることにつながります。
逆に、類似製品・サービスで溢れかえっている現代の成熟市場では、ブランド価値を認められないものについては、顧客から選ばれずに衰退していきます。
したがって、厳しい競争環境の中で生き残るためには、企業は優れたブランディング戦略を立案し、実行していかねばなりません。

では、優れたブランディングとはどういうものなのでしょうか?

ここで、ブランディングの優秀さを判断するためのポイントについてご説明します。
そもそもブランディングとは、ブランド価値向上のために継続的に行われる様々な活動を含んでいるものです。
そのため、優れたブランディングであるかどうかの判断も、その活動のプロセスに注目して評価基準を設ける必要があります。

そこで、コンサルティング会社であるインターブランド社が開催している「ジャパン・ブランディング・アワード」の評価基準を参考に、以下のポイントごとにブランディングの優秀さを判断していくと良いでしょう。

①ブランドの定義やコンセプトの立案は簡潔明瞭な形で顧客の納得・共感を得られるメッセージになっているか?
②ブランドのメッセージを表現する媒体の種類も含め、表現内容・手段の指針やトーン&マナーの開発はしっかりなされているか?
③各タッチポイント(顧客との接点)においてどのような顧客体験を提供するかについての戦略立案はしっかりなされているか?
④各タッチポイントでの顧客体験の提供は実際に効果的なものか?
⑤ブランディングの効果検証として活動の成果が具体的な数字として現れているか?

なお、消費者のブランド選考基準自体が類似製品・サービスとの比較による相対的な判断ですから、ブランディングの優秀さを測る基準も同業他社との相対的な判断になります。 評価の視点とポイントはインターブランド社のホームページで公開されています。
インターブランド社のホームページはこちら

_6.ブランド価値の評価方法の種類

最後に、自社のブランド価値が金額にしてどのぐらいあるのかについて知りたいですよね。
いくつかある無形資産の中でも最も競争力をもたらすものはブランド価値ですから、それを金額に評価した場合にどれくらいになるのかは多くの企業が知りたいところだと思います。

そこで、ブランド価値の評価額の算定方法については大きく分けて3つありますので、それらをご紹介します。
「コスト・アプローチ」、「マーケット・アプローチ」、「インカム・アプローチ」の3種類です。

それぞれのアプローチによる算定方法には一長一短がありますので、結論としては最も妥当とされている「インカム・アプローチ」を軸に、他の2つのアプローチによる結果も参照しながら、総合的にブランド価値の評価額を判断していくと良いでしょう。

_6-1.コスト・アプローチ

「コスト・アプローチ」とは、そのブランド価値を作り上げるのにそれまでに費やしたコストを合計した金額をブランド価値の金額と評価する方法です。
ブランディングに費やした開発費、広告宣伝費、人件費、その他の諸費用を積み上げてブランド価値と算定するもので、一見分かりやすいのがメリットです。

しかし、厳密に考えますと、実はブランド開発のコストの算出が難しい点や(どの費用がブランド価値向上に結びついているのかを根拠づけるのが難しい)、費やしたコストが必ずしも将来的な利益やリスクを反映していないなどのデメリットがあります。
また、ブランドの開発にコストをかければかけるほど、そのブランドの価値は高く算定されてしまうことになりますので、実は実体のない見せかけだけのブランド価値になりがちです。

したがって、コスト・アプローチだけを適用した算定方法は、適正なブランド価値評価の方法としては向いていません。

_6-2.マーケット・アプローチ

「マーケット・アプローチ」は、コンセプトやスタイルが似ているブランドがM&Aで売買された時の取引価格を参考にして評価対象のブランド価値を時価に基づいて算定する方法です。
M&Aの過程で決定された取引価格は市場からの厳しい判断を経てなされたものですので、客観的であり、一定の信用性を見込めるメリットがあります。

しかし、ブランドは独自性の高いものですので、そもそも類似の製品・サービスといえども比較自体が難しいというデメリットがあります。
したがって、マーケット・アプローチも、この算定方法だけを単独で適用するのは心もとないです。

_6-3.インカム・アプローチ

「インカム・アプローチ」は、ブランドが生み出す将来的なキャッシュフローの割引現在価値(=将来受け取れる価値が現在受け取れるとしたら、どの程度の価値を持つかを表す数値)で算定評価する方法です。
コスト・アプローチやマーケット・アプローチは過去のデータをもとに確定的な数値を算出していきますので、将来的な予測や評価といった主観的な判断の入る余地がありません。
それに対して、将来性のあるスタートアップ企業のように、現段階では赤字の企業でも高い成長性を見込める場合もあります。

また、M&A(企業の合併・買収)をしたことによるシナジー効果(相乗効果)が将来的に発揮されて、数年後に得られる利益が莫大になる場合もあります。
したがって、未来の予測を含む柔軟性の高い価値評価をする必要がある場合には、将来性やシナジー効果などの主観的な判断の余地のある項目を実際の計算に反映させることができる必要があります。

つまり、インカム・アプローチのメリットとは、未来の予測を含む柔軟性の高い価値評価をすることができる点にあります。

では、インカム・アプローチはどのような手順でブランド価値を算定評価していくのでしょうか?
次の3つのステップで進めていきます。

①まずは財務分析として、そのブランドが将来の一定の期間内にどれくらいの利益を生むのかということを過去の財務データを参考に金額に換算します(細かい点は、基礎講座ですので深く立ち入らないようにします)。
そして、営業利益からその事業に投下した費用を引いた経済的利益、すなわちエコノミック・プロフィット(EP)を算出します。

さらに、この利益が続くであろう合理的な期間内の年数を予測して、その金額を合計します。
エコノミック・プロフィットはそのブランドが1年間に生み出した付加価値を意味し、その利益が続くと見込める合理的な期間の合計金額を算出するのです。

②エコノミック・プロフィットとして算出された利益のうち、ブランド価値が貢献した役割の割合を分析します。
顧客の購買要因を分析することで、企業が得られた利益のうち、ブランド価値がどれだけその利益に貢献したのかを表す「ブランド役割指数」を算出することができます。

そして、エコノミック・プロフィットにブランド役割指数をかけて算出された金額が、ブランド価値がどれくらい利益の獲得に貢献しているかを表す数値になります。

③最後に、エコノミック・プロフィット×ブランド役割指数によって算出された貢献金額がどれくらい確実に見込めるのかを評価して、将来のブランド価値を現在の価値として換算する作業を行います。
この作業を「ブランド強度分析」といい、ブランド貢献度の確実性を表す指標を「ブランド強化スコア」と呼んでいます。

具体的には、インターブランド社が採用する10の指標を参考にブランド強化スコアを割り出してみてください(基礎講座ですので、詳細は割愛いたします。)。

インカム・アプローチの算出方法は以上のプロセスで行われます。
専門知識やマンパワーの不足により厳密な計算をすることができなくても、業界の中で相対比較して自社のブランド価値がどの程度あるのかを知ることはできますので、有効なアプローチだと言えるでしょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第6回)では、「ブランディング戦略の立案・実行におけるポイントとは?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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