&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第14回)
「自社の強みを深堀りして見つけるための便利な思考枠組みとは?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第14回目のテーマは、
「自社の強みを深堀りして見つけるための便利な思考枠組みとは?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.低価格競争に巻き込まれないためにはどうしたら良いか?

科学技術や情報通信技術の発達により、世の中に商品が溢れる時代になりました。
お金を払えば、ほとんどの商品を手軽に手に入れることができるようになっています。

アメリカや日本をはじめ先進国の市場は、類似商品で溢れかえる成熟市場の段階に達しています。
成熟市場では商品の同質化が進み、同じような商品を市場に投入しても顧客からは選ばれません。
そうなりますと、顧客が商品を選ぶ基準は価格になりがちです。

品質が似たようなものばかりであるのならば、できるだけ安い方が良いからです。
そのため、顧客が商品を選ぶ理由が価格のみの状態になりますと、同品質でより安い競合商品が現れるたびに値下げ競争が始まり、市場は激しい競争状態に陥ります。

血で血を洗うような真っ赤な海のように見えることから、こういった激しい競争状態の市場を「レッドオーシャン」と読んだりしています。
レッドオーシャンとなった市場で低価格競争に巻き込まれたら、働けども働けども楽にならずに、会社がどんどん疲弊していってしまいます。

それでは、成熟市場の中での低価格競争といった不毛な戦いをいつまでも続けなければならないのでしょうか?
低価格競争から脱出して、安定した売上や利益を上げるにはどのようにしたら良いのでしょうか?

それには、競合他社とは勝負の軸をずらすしかありません。
つまり、価格という同じ勝負の軸で戦っているからこそ、いつまでも低価格競争から脱出できないのです。
したがって、自社の強みを価格以外の価値から見つけ出す必要があります。
ブランディングを成功させるためにやるべきことは、まずは自社の強みの分析なのです。

では、顧客が商品に感じる価格以外の価値としてはどのようなものがあるでしょうか?

技術的性能や品質といった機能的価値もあれば、信頼感や安心感、高揚感、ステータス感などの情緒的な価値といったものがあります。
こういった価格以外の価値から自社が顧客に提供できるものを見つけ出していくと良いでしょう。

なお、現在は機能的価値では同質化が進んでおり、なかなか差別化ができません。
そのため、価格以外では情緒的価値で差別化を図る方向でブランディングに取り組む企業が増えています。
例えば、「人間はよく知っているものを好み、信頼する」という共通の心理を持っているため、自社の強みの1つに「安心感」が挙げられます。

以上より、低価格競争に巻き込まれないためには、価格以外の価値を顧客に提供する必要があり、まずは自社ブランドの強みとしてどのような価値提供ができるのかを考えるべきです。
強いブランド価値を持つ商品や企業は、客観的な事実や特徴を根拠に、競合に対して優位性を持つ強みを持っていることがはっきりしているからです。

_2.顧客からの価値評価を得るまでのステップとして、最初に必要なものとは?

それでは、自社ブランドが安心感のような価格以外の価値に対する評価を顧客から得るにはどのようにしたら良いでしょうか?

人間心理を観察してみますと、顧客が自社ブランドのファンになるまでには、認知→理解→好意→愛着というステップを踏む必要があることが分かっています。
ということは、まずは入り口を突破するために、最初に「認知」されなくてはいけないことが分かります。
認知されて初めて、その先の理解→好意→愛着という上のステップへ進むことができるからです。

また、新商品を開発して新しい市場に新規参入する場合には特に、知名度が全くない状態からのスタートですから、まずは顧客から認知されることが大前提になります。
そのため、自社ブランドがどれだけの人に知られているかを正確に把握し、その検証結果から認知度を上げるための強みを押し出す必要があります。

そこで、強みを見つける前の準備として、アンケート調査などを活用することにより、現在の自社ブランドがどれだけの人に認知されているかを正確に把握することから始めてみましょう。
その上で、前回の記事でもご説明した3C分析を進めて、顧客のニーズや競合他社との相対的な比較検討を通して自社ブランドの強みを探り出すのです。

自社の強みはなかなか自分たちでは気づきにくいものです。
そこで、顧客の視点や競合他社の視点も踏まえて俯瞰して見ることで、自社の強みを明らかにしやすくなります。

特に、顧客の視点に立って客観的な姿勢で自社ブランドを見つめ直しますと、顧客が自社ブランドを選ぶ理由が見えやすくなります。
(→「3C分析」についての詳しい説明は前回(第13回)の記事をご覧ください。)

_3.自社が持っている強みに気づくための便利な思考枠組みとは?

3C分析では自社以外の顧客や競合他社の視点という、いわば外からの視点を交えた分析を試みました。
そこから自社の強みを探り出せればそれで良いのですが、それでも強みを見つけ出しにくい場合には便利なフレームワーク(=思考枠組み)があります。

それは「ジョハリの窓」というものです。
これは、以下のような①開放の窓、②盲点の窓、③秘密の窓、④未知の窓という4つの窓を設定し、自社の強みを見つけるために新たな視点を設定するものです。

①開放の窓
自社の強みについて自分も他人も分かっている領域

②盲点の窓
自社の強みについて自分は分かっていないが、他人は分かっている領域

③秘密の窓
自社の強みについて自分は分かっているが、他人は分かっていない領域

④未知の窓
自社の強みについて自分も他人も分かっていない領域

「ジョハリの窓」を活用するメリットは、自分から見る自分という視点と他人から見る自分という視点の2つの軸から考えてみることで、自分では当たり前と思っていることから脱出して自分と他人の認識のズレを理解することができるようになることです。

自分と他人の認識のズレを理解し、受け入れると、開放の窓の領域が広がっていくのです。
職人気質の風土がある会社に多いのが、自分たちの良いところを自分たちが一番分かっていないことです。
自分たちの中では当たり前すぎることが、他人から見たら素晴らしいこと、凄いことであったりすることは多くあります。

それこそ、自分たちでは当たり前と思ってきたことが、ちょっと他人からの視点を入れて見方を変えるだけで、実は最大の強みであることが分かったりします。
そのため、自社が持っている強みに気づくための有効な思考の枠組みとして、「ジョハリの窓」を大いに活用してみましょう。

特に注目すべきなのは、自社の強みについて自分は分かっていないが、他人は分かっている「盲点の窓」です。
他人=顧客と考えますと、ここにこそ競合と差別化できそうな自社の強みが眠っている可能性が高いからです。
ぜひ、「盲点の窓」になっている自社の強みを見つけにいきましょう。

_4.自社ブランドの「盲点の窓」を低コストで見つけるための調査方法とは?

もっとも、「盲点の窓」を見つけにいくとしても、具体的にはどのようにしたら良いのでしょうか?

「盲点の窓」というのは、自社の強みについて自分が分かっていない領域であり、逆に、他人からは分かっているものです。
したがって、自社の強みを見つけるには、その他人から見た自社の強みを教えてもらうべきです。

そこで、自社の強みを知っていそうな他人(=顧客など)に直接聞いてみる方法が良いでしょう。
ただ、地域密着型の中小企業などでは大規模な調査が不要だったり、予算や人員的に厳しい場合もありますよね。
そこで、自社ブランドの「盲点の窓」をなるべく費用をかけずに見つけるためには、次のような方法があります。

①自社の顧客に直接、アンケート調査やインタビュー調査を行い、できるだけ顧客の生の声を聞く。

② SNSやネット上の交流サイトの口コミをウォッチして、バイアスに注意しながらも、自社の評判についての情報を集める。

③自分自身が顧客の立場に立って自社の顧客体験をしてみることで、自社の強みを会社の外側から考えてみる。

④まだ社内の文化に染まっていない新入社員や転職してきた中途社員たちから、社外から見たときの自社の強みを教えてもらう。

⑤日常的に自社の顧客と接している営業担当や店舗の販売員から、顧客の生の声を間接的に教えてもらう。

⑥社員の家族や友人、知人の中で協力してくれる方に自社の強みを教えてもらう。

「盲点の窓」を見つけるための調査で大切なのは、思い込み(=バイアス)のない意見を集めることです。
自社の隠れた強みに社内の多数意見が気づいていないからこそ、社外の視点を持つ人の客観的かつ俯瞰的な見方を聞く必要があるからです。

社内の多数意見と似たり寄ったりなバイアスのかかった意見では意味がありません。
社外の視点を持つ人の言葉の方が的確に自社の強みをとらえていたりすることはよくあることです。
したがって、客観的な視点から率直な意見を伝えてくれる社外の人たちの意見をなるべく広く集めるようにしましょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第15回)では、「ブランドのターゲットを絞るためのターゲット特性のとらえ方とは?(前編)」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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