&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第15回)
「ブランドのターゲットを絞るためのターゲット特性のとらえ方とは?(前編)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第15回目のテーマは、
「ブランドのターゲットを絞るためのターゲット特性のとらえ方とは?(前編)」です。

それでは行ってみましょう!

_1.セグメンテーションとは?

皆さんご存知でしょうか?
ブランディングやマーケティングの世界では「誰にでも好かれようとすると、かえって誰にも好かれない」ということを。
また、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺もあります。

現代の市場は類似商品で溢れかえる成熟市場になっており、また、顧客のライフスタイルや価値観も多様化しています。
そのような中で、顧客ニーズも多様化しており、市場の中はそれぞれの顧客ニーズごとにいくつかのグループに分けられます。
顧客から選んでもらえるような商品になるには、異なるニーズごとに合った商品を開発し、提供していかなければならなくなりました。

そのため、1つの商品で市場内の全てのグループのニーズを満たすことは、巨大資本や多くの流通ルートを確保している一部の大企業でもない限りは、まず不可能な時代になっています。
また、限りある経営資源を有効に活用するためにも、自社の強みを活かせるようなニーズを持った顧客層に効率的にアプローチしなければなりません。

そこで、まずは1つの市場の中をニーズが同じような顧客層ごとにグループ分けして考える必要があります。
ニーズが同じような顧客グループごとに市場を区分けすることを「セグメンテーション」といいます。
そして、市場の中で同じニーズごとに区分けされた部分のことを「セグメント」と呼んでいます。

_2.ターゲティングとは?

2-1.ターゲティングの意味と必要性とは?

セグメンテーションを行って、同じようなニーズを持つ顧客セグメントごとに区分けできたら、次は自社の強みを活かせるようなニーズを持っている顧客層のセグメントに狙いを定める作業を行います。
この特定のセグメントに狙いを定めることを「ターゲティング」と呼んでいます。
ターゲティングによって自社の強みに最適な顧客層の選別をするためです。

では、ブランディングを成功させるためには、ターゲティング(=ターゲット設定)をどのようにしたら良いのでしょうか?
まず、ターゲティングをするには、ターゲットを広げる発想ではなく、絞る発想で考えることです。

これは先ほどもご説明しましたように、限りある経営資源を効率的に活用して顧客満足を実現するためには、自社の強みを活かせるようなニーズを持った顧客層に絞ってアプローチしていくべきだからです。
つまり、選択と集中の考え方です。

また、ターゲットを絞ることで、ターゲット顧客層のニーズにかなった尖った特徴を持つ商品の個性をアピールすることができるようになります。
そうしますと、ターゲット層の顧客から見れば価値ある独自性を持った商品として差別化されたイメージになりやすいのです。

ターゲットを絞ることで、ターゲット顧客層から見てより魅力的な商品になれば、ブランドを理解し、愛着を持ってくれる顧客がリピーターになってくれることも多いです。
したがって、ターゲティングにおいては、ターゲットの絞り込みが成功のカギになります。

2-2.ターゲットを絞ることへの不安とターゲティングの成功例

ただ、ブランドのターゲットを絞ってしまったら、母集団となる潜在顧客層が減るわけですから、自社ブランドの顧客が減ってしまい、売上も減少するのではないかという不安をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

しかし、ご心配には及びません。
もちろん、ターゲットの絞りすぎは良くありませんが、適切にターゲットを絞った場合には顧客が減るとは限らず、かえって増えるケースが多いからです。

例えば、スターバックスやサイゼリヤは受動喫煙防止の観点から全席禁煙に踏み切りました。
それまでの顧客の中の愛煙家の皆さんには受け入れがたい措置であったかもしれません。
そのため、愛煙家客の減少ということが当然ながら予想できたわけです。

しかし、蓋を開けてみれば、スターバックスもサイゼリヤも多数の顧客で賑わっています。
むしろ、飲食店の中のタバコの煙や臭いを嫌って入店を避けていた人たちが新たな顧客として訪れるようになったのです。
社会全体で見れば愛煙家の方たちの人口割合は年々減少し、非喫煙者が多数の社会になっています。

そのため、スターバックスもサイゼリヤも、全席禁煙措置によって愛煙家の方たちは離れていっても、多数を占める非喫煙者の来店者数の方が増えて、トータルで見れば来店者数が増える見込みがあったのだと思います。
また、愛煙家の顧客の中でも、食事の時ぐらいは吸わないでおこうという方たちも一定割合はいますので、一部の愛煙家の顧客が減ったとしても、それほど大きなダメージはなかったと思います。

このように、適切にターゲットを絞った場合には、売上が必ずしも下がることはなく、むしろ逆に増加することも多いのです。

2-3.顧客層の絞り込みと売上確保の必要性との上手いバランスのとり方とは?

ブランディングが成功するということは、ターゲット顧客層が自社ブランドを購入してくれることであり、売れてこそ価値が認められるという現実があります。
そのため、ブランディングを成功させるためには、適切なターゲット顧客層の絞り込みと売上確保の必要性とのバランスを取らなければなりません。

そこで、バランスを取るためのポイントとして、ターゲットを考える上で「ブランドターゲット(=ブランドのイメージする象徴的なターゲット)」と「戦略的ターゲット(マーケティングターゲット)」とを分けて考えるようにしましょう。
ここで「ブランドターゲット」とは、ブランドの理念や世界観、提供価値に強く共感する人々、いわばファンになってくれる顧客層のことです。

スターバックスを例にとりますと、都会的で上質なサードプレイス(=家でも職場でもない第三の場所)を求める人がブランドターゲットになります。
仕事で忙しいビジネスマンの中でも経済的・精神的にゆとりがあって、お金を払ってでも居心地の良い空間を確保したいというニーズがある顧客層です。

高級自動車のBMWも例にとりますと、革新を求めて成功のためのキャリアを追求し続ける新興のビジネスエグゼクティブ層がブランドターゲットになります。
従来の伝統的な社会的エリート層をブランドターゲットとするベンツとの対比を意識したものと言われています。

ブランドターゲットは、必ずしも実在する人である必要はなく、ブランドを体現する理想的なユーザー像になります。
ブランドターゲットを設定することには、自社の強みを活かせる顧客層へのマッチングを実現するとともに、ブランディング施策の一貫性を保つための指針となる役割があります。

他方、「戦略的ターゲット(マーケティングターゲット)」とは、売上の最大限確保を可能にする顧客層のことで、ブランドターゲットへの憧れや機能性、価格など、様々な理由で商品を実際に購入してくれる人々です。
売上規模確保のための拡販先であり、ボリューム層といえます。

スターバックスの例では、その世界観や居心地の良さに憧れて、友達と学校帰りに立ち寄りInstagram用の写真を撮る高校生や大学生、あるいは、家族でたまにはプチ贅沢をしてゆったりとした時間を過ごしたい家族連れの人々などがマーケティングターゲットに当たります。

また、BMWの例では、革新を求めて成長し続けるビジネスエグゼクティブ層が醸し出している、プレミアム性のある世界観に惹かれるビジネスキャリア層などがマーケティングターゲットになります。

絞り込みの要となるブランドターゲットを設定することに加えて、売上を確保していくための戦略的ターゲットを定めることで、絞り込みと売上確保とのバランスを取ることができるようになります。

以上、ブランディングを成功させるためには、ターゲット設定における絶妙なバランス感覚が必要であり、柔軟なターゲットの絞り具合が大切なのです。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第16回)では、「ブランドのターゲットを絞るためのターゲット特性のとらえ方とは?(後編)」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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