&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第16回)
「ブランドのターゲットを絞るためのターゲット特性のとらえ方とは?(後編)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第16回目のテーマは、
「ブランドのターゲットを絞るためのターゲット特性のとらえ方とは?(後編)」です(前回のつづき)。

それでは行ってみましょう!

_3.ブランドのターゲットを定める際の2つの軸とは?

前回の記事でもご説明しましたが、セグメンテーションからのターゲティングによってターゲットを絞ることの理由は、自社の強みを活かせるニーズを持った顧客層に狙いを定めることで、限りある経営資源を有効活用して顧客満足を実現するためでした。
そのためには、市場の中のどのニーズを持った顧客層がいるグループ(=セグメント)に狙いを定めるのか、そして、的を絞るのかが大切になってきます。

しかしながら、ターゲットを絞りすぎると売上が落ちるのではないかという不安に駆られて、誰にでも好かれようとしてターゲットを広げすぎてしまう過ちを犯してしまいがちです。
つまり、性別・年代や趣味・嗜好も幅広くカバーするために、必要以上に多くの人をターゲットに取り込むことで、かえってブランドの特徴が平凡でありふれたものになってしまうということです。

平凡な印象のブランドになってしまいますと、それはもはやターゲットの印象には残らなくなるため、逆効果になります。
そのため、セグメンテーション→ターゲティングの流れによって、ターゲットを適切に絞り込む必要があるということでした(→これについては、前回の記事(第15回)で詳しくご説明しましたので、そちらをお読みいただければ幸いです。)。

前回までの記事の復習はこれぐらいにしておきまして、それではターゲットを絞るには具体的にどのように考えればよいのでしょうか?
ターゲットを適切に絞るためには、ターゲットの顧客像をただ漠然とイメージしていても難しいので、セグメンテーションの際に基準になる物差しを使うとイメージが湧きやすくなります。

ただ、顧客像をイメージするために使う物差しの数が多すぎても、話が複雑になりすぎて、かえってターゲット顧客のイメージが湧きにくくなってしまいます。
効果的なターゲットの絞り込みの結果として大事なのは、自社の強みに合ったニーズを持つ顧客をより具体的にイメージできるようになることです。

そこで、ターゲティングの前提となるセグメンテーションにおいては、物差しとして2つの軸を使うことにより、2つの方向から顧客を分析してターゲット顧客を設定するようにしましょう。
ここで、セグメンテーションの際の2つの軸とは、性別・年齢・地域などの人口統計学的な側面からの軸と、趣味・嗜好・ライフスタイルなどの心理学的側面からの軸のことです。

なぜ、この2つの軸をもとにターゲティングを考えれば良いのでしょうか?
現代は顧客の価値観やライフスタイルが多様化しており、ニーズも様々です。
そのような市場環境の中で1つの軸だけでターゲットを絞ることは難しいです。

だからこそ、人口統計学的な側面と心理学的な側面の2つの軸から多面的にターゲットを捉えることで、解像度を上げた顧客ニーズの分析や、ターゲット層の絞り込みが可能になるのです。

特にポイントになるのは、好き・嫌いや、楽しさ、憧れ、独身生活で趣味に生きる、などといった価値観やライフスタイルなどの心理学的側面からの検討です。
従来型の性別や年代で顧客ニーズを仕分けるといった人口統計学的側面の軸だけでは、多様化する顧客の価値観やニーズを正確に把握することができなくなってきているからです。

つまり、現在の成熟市場で顧客から選ばれるブランドになるためには、顧客の心理にまで深く踏み込んでターゲット顧客層を設定する必要があるのです。
そのため、できるだけ顧客のインサイト(=真の本音)に迫れるようなニーズの区分をすることができる軸を設定したいものです。

そこで、心理学的側面からの軸をより細かく具体化した次の4つの軸でセグメンテーション→ターゲティングの流れを行っていくと良いでしょう。

①趣味・嗜好からくる製品への関心の強さ
②商品の取捨選択ができるだけの知識や判断力
③購入しようと思える価格の幅
④製品に向き合う時のスタイル・価値観

結論として、セグメンテーション→ターゲティングを考えるときに大事なことは、ブランドの良さを理解し、納得・共感してくれるのはどんなニーズを持った顧客層なのかを具体的かつ明確にすることです。
このようにして、2つの軸から多面的に捉えたターゲット顧客層のことを「ブランドのターゲット(コアターゲット)」と呼んでいます。

ただ、セグメンテーション→ターゲティングはあくまで、市場の中の実際に存在する顧客グループの中から自社が訴求すべきニーズを持った顧客グループの属性を設定するものです。
しかしながら、これだけではまだ足りません。
もっと具体的に、1人の人間としての理想的な顧客像を設定するべきです。

この理想的・象徴的な顧客像のことを「ペルソナ」といいます。
ターゲット顧客に的確に狙いを定めて、限りある経営資源を有効に活用して顧客満足を実現できるブランドになるためには、セグメンテーション→ターゲティングをした後は、さらに、ペルソナの設定も行うべきなのです。

ここまでの説明でご理解いただけたかと思いますが、ブランドのターゲットとペルソナは、設定の深さ(具体性)が異なります。
また、ブランドのターゲットは実在する集団の共通する属性に着目したものですが、ペルソナはあくまで理想の顧客像ですので、実在している1人の人間である必要はありません。

_4.ペルソナ設定によってターゲット顧客層をより一層具体化させよう

ペルソナの設定を行うべき具体的な理由とは何でしょうか?

その理由は、まず、理想のユーザー像が明確になることです。
社内的には商品の開発に多くの人が関わり、関係者全員の認識を合わせるのは簡単ではありません。
そのような中でペルソナを設定することにより、関係者の認識がずれた状態でブランディングが進んでしまう可能性を減らせます。

つまり、共通のイメージを共有できるツールとしてペルソナが役に立つのです。
これにより、自社の強みを活かせるニーズを持った顧客層への効果的なブランディングが可能になります。

また、顧客側から見ても、設定されたペルソナとよく似た人物像を持つユーザーからは、「自分のための商品だ!」と思ってもらいやすくなり、訴求力がいっそう高まるメリットがあります。

逆に、ペルソナをきちんと設定せずにターゲット層が曖昧なまま商品開発や広告制作を進めてしまいますと、社内の意見がまとまらず、狙った顧客層への訴求力も弱くなってしまいます。
結果としてどの顧客層にも響かないものになってしまう恐れがあるのです。

目の前のたった1人の顧客を喜ばすことができずに、より多くの顧客を喜ばせることはできません(もちろん、目の前のたった1人の顧客というのは自社の強みを活かせそうなニーズを持った顧客であるという条件はありますが。)。
ということは、顧客満足実現のための究極的な目標は、ペルソナ1人を喜ばす商品を開発・提供することができるようになることです。

それでは、ペルソナを設定するには具体的にどうやれば良いのでしょうか?
まず、ブランドのターゲットの中から代表的な1人を抽出します。
その代表的な1人に対して、自社の強みを活かせそうな年齢やライフスタイルなどの象徴的な部分をピックアップして理想の顧客像を作り上げていきます。

ペルソナは実在する1人の人間である必要はありませんが、できるだけ本当にいそうなリアルな1人の人間に設定することで、現実感が生まれ、ブランドに携わる人がイメージを共有でき、かつ、その人物像に共感しやすくなります。

また、自社のブランドを選んでもらう背景やストーリーについて社内での共通理解が進み、ブランディングを行う上で基盤にすることができます。
つまり、ペルソナのおかげで社内の関係者全員がターゲットの視点で自社ブランドを見ることができるようになるのです。

そのため、ペルソナ設定の作り込みでは、性別、年齢、居住地、職業、年収等の人口統計学的属性(=デモグラフィック)から、価値観、趣味、嗜好、ライフスタイルなどの心理的属性(=サイコグラフィック)まで詳しく設定するようにしましょう。

最後に、ペルソナを設定する際の注意点をご説明します。

戦略ブランディングに役立たせるためのペルソナを設定するにはいくつかの注意点があり、架空の人物像をただ作り上げれば良いものではありません。

まず、①主観や理想にとらわれないようにすること。
ペルソナと実際のユーザー像がかけ離れていると意味がありませんので、実際のユーザー像からずれたペルソナができないように、データなどの客観的事実を根拠にして設定するようにしましょう。

次に、②分かりやすさを重視し、イメージしやすいペルソナ像を意識しましょう。
ペルソナ設定は具体性が大切だと言っても、特徴を盛り込みすぎて複雑になりますと、かえって理想のユーザー像が掴みにくくなってしまいます。
分かりやすさを重視して、必要のない情報を取り除き、特徴を把握しやすい具体的なユーザー像を作り上げるようにしましょう。

さらに、③一度設定したペルソナ像は永久不変のものではないので、市場の変化に合わせるために定期的に見直しをしましょう。
市場やユーザーを取り巻く環境は常に変化し続けています。
最初のペルソナ設定から長い時間が経ったときには、ペルソナと実際のユーザー像にズレが生じている可能性があります。

また、ブランディングの成果が出ていない場合にはペルソナ設定の見直しが有効だったりします。
そこで、市場の変化やブランディングの成果などをチェックしながら、ペルソナが実際に有効に機能しているかどうかを確認しましょう。
そして、ペルソナが実際のユーザー像を反映し続けるように定期的に見直しをしていきましょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第17回)では、「顧客のインサイト(=本音)をつかむには?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
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様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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