&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第17回)
「顧客のインサイト(=本音)をつかむには?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第17回目のテーマは、
「顧客のインサイト(=本音)をつかむには?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.無意識の領域まで深掘りして顧客心理を把握する

前回(第16回)までの基礎講座の中で、リサーチ→セグメンテーション→ターゲティング→ペルソナ設定まで進んできました(→ポジショニングは、また別の回でご説明します)。
これらはどれも、限りある経営資源を有効に活用して、顧客ニーズに的確に応える商品を提供できるようになるための準備でした。

プロセスが進むにつれて、自社ブランドの強みを活かせるようなニーズを持った顧客層に向けて、少しずつターゲットが絞られていきましたね。
いわば、顧客層の選択と集中を行うことで、自社の強みとターゲット顧客層のニーズがうまくマッチングするように、ターゲットとするべき顧客層を絞ってきたわけです。

特に、最後のペルソナ設定では、実在はしていないものの、自社の強みを活かせるような理想の顧客像を1人の人間として具体的に描き出しました。
これにより、商品開発における社内での議論に必要な共通のイメージが醸成されて、会議がスムーズに行くようになります。

また、顧客からも「まさに自分のことだ!」というイメージを持ってもらいやすくなるメリットもありました。
一度に多数の人のことを考えるよりも、たった1人の理想の顧客像に絞って顧客ニーズを考える方が、ブランドが打ち出したい世界観をブラさずに効率的に考えることができるわけです。

ただ、ペルソナ設定までやり終えれば、それで自社ブランドが売れていくことが確実に見込めるのでしょうか?

ここに1つの疑問があります。
以上のようなプロセスでターゲットの絞り込みを行うと、結局みんな同じペルソナに行き着くのではないかということです。
ある会社のマーケターやブランディング担当者が考えていることは、当然ながら競合他社の担当者たちも同じことを考えていると思っておいた方がよいからです。

そもそも、ブランディングの究極の目標は、顧客から見て差別化された価値ある個性を創り出すことです。
そのためには、価値ある個性かどうかを判断するのは顧客である以上、ターゲット顧客を絞っていくプロセスの中で、少しずつ顧客の心の奥底にある本音に迫っていく必要があります。

ちなみに、その人の心の奥底にある本音のことを「インサイト」と呼んでいます。
インサイトは心の奥底にありますから、時には本人すら気づいていない、いわば隠れた本音であることが多いです。
そのため、実はこの顧客インサイトを探り当てることがなかなか難しいのです。

どこの会社も顧客インサイトを探り当てることを頑張っていますが、すべての会社が正確にインサイトを探り当てられたら、世の中ヒット商品だらけになりますよね。

ところが、残念ながらそうはなっていません。
インサイトとは顧客自身ですら気づいていないことが多い無意識下の真の本音ですから、それを第三者であるマーケターやブランドデザイナーが探り当てることは容易ではないのです。

ここで、この先の話を理解しやすくするために、複雑な消費者の心理について簡単にご説明しておきましょう。

一般的に人間の行動というものは、意識的に行動している割合は行動全体のうち5%くらいと言われているように、ほとんどが無意識に行われるものです。

そのため、人間の心理はよく氷山に例えられます。
氷山の一角という言葉があるように、海上に浮かんでいる氷山は全体の容積から見ればごく一部であり、そのほとんどが海面下に沈んでいます。

顧客心理も同様のことがいえます。
つまり、本人だけでなく周りの人も気づいているようなニーズは顧客心理のごく一部でしかないわけです。

顧客心理は表面的なところから奥深くまでいくにつれて、①顕在的ニーズ→ ②潜在的ニーズ→ ③インサイトといった3段階の構造になっており、一番奥深いところにあるものがインサイトになります。

氷山の例えで言えば、海の上に見えている氷山の一角は①顕在的ニーズに当たり、海の下に沈んでいる膨大な容積の部分は②潜在的ニーズと③インサイトに当たります。
ちなみに、①顕在的ニーズは皆がそれに気づいているので、差別化するための判断材料にはなりません。

①顕在的ニーズ
皆が気づいているニーズのこと。

②潜在的ニーズ
顧客自身は自覚していないが聞かれれば答えられる本音と、自覚しているがあまり言いたくない本音の2種類からなるもののこと。

③インサイト
本人が自覚していない、あるいは、気づいていない、言葉にできないような本音のこと。

_2.インサイトの把握が不可欠な具体的な理由とは?

インサイトは本人すら気づいていない無意識のものであるため、ましてや他人がそれを探り当てることはなかなか難しいということをご理解頂けたかと思います。
顧客のインサイトまで深掘りできずに、競合他社も把握している①顕在的ニーズや➁潜在的ニーズをもとに商品を開発したところで、競合との差別化は難しいのが現実です。

だからこそ、正確に顧客インサイトを探り当てることができたら、それを踏まえた顧客満足度の高い商品開発をすることができ、競合他社の中で一歩抜きん出て差別化を図ることができるようになれるのです。
インサイトは、別名、「購買意欲を後押しするボタン」とも言われているからです。

また、各社それぞれに強みは異なりますから、インサイトの把握具合との組み合わせも考えれば、理論上は無数の戦略があることになります。
したがって、無数の戦略の中から自社の強みと把握できたインサイトとをきちんとマッチングさせる戦略を選ぶためにも、インサイトの深掘りをしっかりと行いましょう。

_3.インサイトを見つけるための考え方・姿勢とは?

確かに、表面上の行動からだけでは顧客のインサイトを見つけるのは至難の業であるといえます。
それでは、どうやったらインサイトを見つけることができるのでしょうか?
インサイトを見つけるための考え方や姿勢とはどのようなものでしょうか?

顧客の心理を深掘りしてインサイトを探り出すには、顧客の購買行動とその理由に対して繰り返し「なぜ」と問う思考を続けることです。
マーケターやブランドデザイナーは、様々な統計資料や実際の顧客の行動観察などを通して購買動機を探るための「なぜ」を問う思考を続けます。

そうすることではじめて顧客のインサイトにたどり着くことができるからです。
したがって、インサイトを見つけるための考え方・姿勢とは、顧客の購買動機を心の奥深くまでさかのぼるための「なぜ」を問う思考を続けることであり、この「考え続ける」姿勢こそが、ブランディングの成功を招き寄せるのです。

_4.インサイトを探る方法としての「カスタマージャーニー」とは?

ただ、インサイトを深掘りするための「なぜ」を問う思考を続けるといっても、やはり具体的な方法論を知っておくとやりやすいと思います。
人は考える材料や考えるための枠組みがあるからこそ、物事を考え続けられる生き物だからです。

それではインサイトを探るための具体的な方法としてはどのようなものがあるのでしょうか?

「顧客の本音は顧客から直接聞け」と言うように、まず思い浮かぶのは、顧客へのアンケート調査やインタビュー調査を行うことです。
これらの調査は専門業者に委託して大規模に行うのでなければ、それほど費用もかからず、手軽に行いやすいメリットがあります。

また、潜在顧客である消費者や自社ブランドの顧客から直接聞き取る調査であるため、比較的インサイトに迫りやすいメリットもあります。
しかし、これだけではインサイトを正確に把握するのは難しいです。

前述のように、インサイトとは顧客自身ですら気づいていない心の奥底にある本音のことですから、アンケートやインタビューにインサイトを出せる顧客自体が少ないからです。
繰り返しになりますが、顧客自身ですら自分の本音をよく分かっていないことが多いということを思い出しましょう。

そこで、アンケートやインタビュー調査のメリットを生かしつつ顧客のインサイトに迫るには、他の方法もあわせて活用すると良いでしょう。

他の方法とは、顧客の行動観察です。
顧客自身ですら気づいていない心の奥底にある本音というものは、実は、本人も意識していない日々の行動の端々や生活習慣に現れていることが多いからです。

そこで、「なぜそのお店を選び、なぜその商品を購入したのか?」という問いを中心にして、顧客の行動をよく観察することでその答えを深掘りします。
そうすると、インサイトが見えてくるのです。

それでは、行動観察のやり方を具体的にご説明しておきましょう。

なるべくコストをかけずに、すぐに行うことができる代表的な方法として、「カスタマージャーニー」があります。

これは、顧客のインサイトを探るために、対象となる顧客の行動を購買前・購買時・購買後に分けて分析する行動観察の手法です。

カスタマージャーニーのプロセスは、以下の手順で進んでいきます。

①まずは、ある商品を対象に顧客がどんな行動をとるかについて、購買前・購買時・購買後に細かく分けて予想します。
つまり、ある商品をどのようなきっかけで知って、そこから最終的に購入した商品をどのような使い方をしたか、購買の前後を通してどのような体験をしたのかまでの一連の流れを予想します。

そして、その顧客が体験する一連の流れがどんなストーリーで表現されるのかを考えるのです。
これにより、実際に行動観察する時の要チェックポイント(=重点的な観察ポイント)が明らかになるからです。

②次に、実際に顧客の行動観察をします。
具体的には、顧客の購買前後の行動や日々の暮らし方、習慣などを観察していきます。
これにより、タッチポイントごとに現れる顧客の行動や仕草の端々から、顧客が何を求めているかのインサイトが次第に明らかになってくることが多いからです。

そして、事前の予想と合致したか否かを観察するとともに、観察した結果(事実)から「顧客はなぜその行動を取ったのか?」という問いに対する答えを仮説として組み立てていきます。
仮説の組み立ては、この後に行う「インサイト探しのワークショップ」のための準備作業になります。

③最後にワークショップを行って、インサイト探しの答えを突き詰めていきます。
ここまでで、行動観察の結果としての事実と、ワークショップの各出席者が事前に考えてきた仮説が出揃いました。

「三人寄れば文殊の知恵」といいます。

各ブランディング担当者が持ち寄った仮説について、その事実や根拠とともに真剣に話し合い、顧客のインサイトがどうであるかという結論を導きましょう。
良きファシリテーターと意欲的なメンバーが揃えば、そのワークショップで出た結論は顧客インサイトに限りなく近いものになるでしょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第18回)では、「競争地位別のとるべき戦略とは?(前編)」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
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私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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