&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第19回)
「競争地位別のとるべき戦略とは?(中編➀)」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第19回目のテーマは、
「競争地位別のとるべき戦略とは?(中編➀)」です。

それでは行ってみましょう!

_2.チャレンジャーブランド

前回(第18回)の記事では、リーダーブランドがとるべき戦略についてご説明しました。
今回も引き続き、市場の中での競争地位(=ポジション)別にとるべき戦略についてご説明して参ります。

特に、チャレンジャーブランドについては挑戦的チャレンジャーと共存的チャレンジャーの2タイプに分けてご説明した方がご理解いただきやすいと思いますので、今回の中編➀ではチャレンジャーブランドがとるべき戦略についてご説明して参ります(→ニッチャーブランドとフォロワーブランドについては次回(第20回)以降の記事でご説明する予定です)。

そもそも「チャレンジャー」とは、業界2〜3位の市場シェアを持ち、リーダーに挑戦できるほどの経営資産を持っているブランドのことです。

このチャレンジャーには2つのタイプがあります。
リーダーに対する姿勢の違いによって、挑戦的チャレンジャーと共存的チャレンジャーに分けられるのです。

「挑戦的チャレンジャー」とは、リーダーに追いつき追い越せの姿勢で、トップシェア奪取を目指した挑戦的な行動をとるブランドのことです。
これに対して、「共存的チャレンジャー」とは、リーダーとは争わずに共存共栄の戦略をとることで、潤沢な利潤を確保することを目的とした行動をとるブランドのことです。
便宜的に「チャレンジャー」との言葉が入っていますが、共存的チャレンジャーの場合にはリーダーに挑戦するような戦略は採用しません。

それでは、それぞれのチャレンジャーブランドが採用すべき基本戦略とはどのようなものなのでしょうか?

今回(第19回) の中編➀では、まず「挑戦的チャレンジャーの戦略」からご説明していきます。

2-1.挑戦的チャレンジャー戦略が成り立つ市場環境及び戦略目標とは?

挑戦的チャレンジャー戦略を採用するのに適している市場環境とは、市場の成長余地がまだ残されている場合です。
つまり、成長市場の末期から成熟市場の初期くらいの段階までで、まだ顧客数が増加する見込みが中程度以上にある場合に採用するべき戦略です。

市場の成長余地が中程度以上に残されている段階であれば、多額の投資をしてリーダーとシェア争いをしても、トップシェアを奪取した後のリターンが十分に見込めるからです。
そして、戦略目標は、当たり前ですが、トップシェアをリーダーから奪取することです。

2-2.挑戦的チャレンジャーが採用するべき基本戦略➀~差別化戦略~

ただ、資本や人材の厚み、知名度、流通チャネルの支配力など、リーダーは経営資源を豊富に持っており、チャレンジャーが正面からぶつかったところで勝てる見込みはまずありません。
そのため、リーダーが支配している市場では正面衝突を避け、リーダーの守備が手薄な市場で勝ちに行く戦略を立てるべきです。

まず、リーダーの顧客を奪取するには、顧客ニーズをより的確に捉えて、差別化された独自性ある商品を提供する必要があります。
そうでなければ、顧客はリーダーのブランドの方を購入し、自社ブランドには目もくれないからです。

したがって、挑戦的チャレンジャーが採用するべき基本戦略としては、まずは「差別化」になります。
リーダーのブランドとは異なる特徴を持ったブランドを開発・提供して、顧客の頭の中に独自性ある価値としてイメージしてもらえるように活動していきます。

もっとも、リーダーは挑戦的チャレンジャーの差別化の動きに対抗して、自社ブランドに相手の良いところを取り込んで「同質化」してしまう行動に出ます。
つまり、差別化要素を無効化してしまう動きに出るのです。

そのため、挑戦的チャレンジャーは一時的にリーダーから顧客を奪えても、リーダーの「同質化」行動が成功すれば、一時的な繁栄で終わってしまうことになります。
そこで、差別化といっても、リーダーから真似されにくい差別化をしていく必要があります。

具体的には、リーダーが持っていない経営資源を活用して差別化を図ることや、リーダーが同質化行動を取れない内部事情を利用することなどです。

リーダーが持っていない経営資源を活用して差別化を図る例としては、シチリア在住の著名なイタリア料理研究家と専属契約を結び、自社だけにレシピを提供してもらう権利を保有することといったことが考えられます。
もちろん、独自の研究成果や技術を保有していることなども差別化要因にできます。

また、リーダーが同質化行動を取れない内部事情を利用することの例としては、ジョンソン&ジョンソンの歯ブラシ「リーチ」と業界リーダーであるライオンとの事例が参考になります。
ジョンソン&ジョンソンは口の中の奥にまで歯ブラシが届くようにと、ブラシの部分が他社ブランドよりも小さいものを開発・提供しました。

これに対して、業界リーダーであるライオンが同質化行動に出るかと思ったら、なかなか出来ませんでした。
実は、同質化行動に出られない内部事情があったのです。

それは、ライオンは歯磨き粉の市場でもリーダーであったために、ブラシの部分が小さい歯ブラシを開発・提供してしまいますと、歯磨き粉の消費量が減ってしまうので、自社の歯磨き粉の売上げを減少させてしまうというジレンマでした。

ジョンソン&ジョンソンはライオンの同質化できない内部事情を突いて、「リーチ」によって歯ブラシ市場のシェアを拡大できたのです。

このように、挑戦的チャレンジャーの差別化戦略では、マーケティング4P(製品、価格、流通、広告宣伝・販売促進)のうちの一部、あるいは、全てにおいて、リーダーとは異なった特徴のあるものを開発・提供していきましょう。

2-3.挑戦的チャレンジャーが採用するべき基本戦略➁~先手必勝戦略~

ただ、上手く差別化できたとしても、時間が経てばリーダーも遅かれ早かれ同質化してきます。
そこで、挑戦的チャレンジャーが採用するべき次の基本戦略は、リーダーよりも速いスピード感を持って選択と集中を図る先手必勝戦略です。

リーダーは、一般的に組織が大きいため、意思決定に時間がかかり、市場環境の変化に応じた機動的な動きができません。
それに対して、チャレンジャーはリーダーほどは組織が大きくないため、意思決定にかかる時間も少なく、機動的な動きを取りやすいメリットを持っています。

つまり、リーダーは、資本力や経営組織の規模、情報量、影響力その他諸々の点においてチャレンジャーにはない強みがありますが、反面、組織が大きくて動きが鈍いという短所もあります。
リーダーといえども決して万能ではないのです。

他方、チャレンジャーにも、経営資源が少ないという弱みがありますが、逆に、小回りが利きやすいという強みもあります。
そこで、チャレンジャー自身の機動力・スピード感という強みを活かして、リーダーの弱点である動きの鈍さを攻撃するのです。

したがって、先手必勝戦略におけるターゲット市場の選定においては、次の2つの戦略が考えられます。

①今後の全体的な勝敗を左右する決定的セグメントに焦点を当てて、そこに経営資源を集中投入する戦略

②リーダーの守備が薄い特定のセグメントに集中攻撃を仕掛け、1つずつ各個撃破して攻略しながら、機動的にターゲット市場を変えていく戦略

まず、チャレンジャーが保有する経営資産では、市場の中のすべてのニーズをカバーできるほどの商品ラインナップは揃えられないので、①と②の両方とも、リーダーよりは狭い商品ラインナップにせざるをえません。
そこで、主戦場となるターゲットセグメントでは、代わりに商品ラインの深さをリーダーよりも深くして、特徴を持たせたものにすると良いでしょう。

次に、①の決定的セグメントとは、例えば、ビール市場では20~30歳代のセグメントであり、ここでどれだけシェアを取れるかでその後の30歳代以降のセグメントでの勝敗も決まってくるというものです。
女性用化粧品についても、18~24歳のセグメントでどれだけ他社よりもシェアを取れるかで、その後の年齢別のセグメントにおける影響力が変わってきます。
➀の戦略では、このような決定的なセグメントに経営資源を集中投入して、リーダーのブランドと明確な差別化を図り、リーダーの顧客を奪取しに行くのです。

ただ、そういう決定的セグメントは、当然ながらリーダーの側も警戒しており、強固な防衛線を張っていることが多く、攻略するのが難しい場合が多いです。

そこで、②のリーダーの守備が薄いターゲットセグメントを次々に攻撃して各個撃破していきながら、機動的にターゲット市場を変えていく戦略が有効になります。
つまり、挑戦的チャレンジャーは、リーダーにはない高い機動力を活かして常にイニシアティブを握り、狙いを定めたターゲットセグメントに経営資源を先んじて集中投入することで、リーダーの顧客を奪うのです。

以上が、挑戦的チャレンジャーが採用すると良い基本戦略です。
ここまでの説明を参考にして、自社ブランドにふさわしい戦略を考えてみてください。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第20回)では、「競争地位別のとるべき戦略とは?(中編②)」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
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6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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