&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第31回)
「ブランド価値を言葉や文章で伝えるための重要なツールとは?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第31回目のテーマは、
「ブランド価値を言葉や文章で伝えるための重要なツールとは?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.トーン・オブ・ボイスとは?

皆さんは、相手や場面ごとにメッセージの内容や口調(語り口)をコロコロ変えるような人のことを信頼できますか?
多くの人は、そのような人のことは信頼できないと思うでしょう。
企業ブランドや商品ブランドにおいても同じことがいえます。
タッチポイント(=顧客接点)や顧客ごとに違うメッセージの内容や口調(語り口)であったりしますと、顧客から見れば同一のブランドなのかどうなのかが分からず、混乱し、ひいてはブランドらしさを損なうことになってしまいます。
結局、顧客から信頼されずに、ブランド価値が認められないものになってしまうのです。
したがって、ブランドらしさを言葉や文章で正しく顧客やステークホルダーに伝えられるようにするために、メッセージの口調(語り口)や内容を統一するためのルールを定めておく必要があります。
いわば、ブランドらしさを正しく伝えるために、ブランドのメッセージを言葉や文章で伝えるときのルールブックを作るのです。

ブランドの言語的表現に関するルールブックの代表的なものに「トーン・オブ・ボイス」と「メッセージシステム」があります。
特に、口調や語り口といった側面に重点を置いてルールを定めたものを「トーン・オブ・ボイス」と呼んでいます。
例えば、「です・ます」調での口調だったのが、他の場面や人に対しては「~だぜ」「~かよっ!」などのちょっと乱暴で雑な口調にコロコロ変わったら、顧客から信頼してもらえるでしょうか?
ブランドの公式TwitterなどのSNSでも、執筆担当者が変わったからといって、いつも発信している口調とは全く異なる口調で発信し始めたら、フォロワーさんたちは混乱し、目を疑うでしょう。
このような混乱や不信感を顧客やステークホルダーに持たれないようにしなければなりませんね。

そこで、トーン・オブ・ボイスは、「どのような言葉や口調で語りかけるのか」についてのルールを定め、全てのタッチポイントで一貫性や統一感を持ってブランドのメッセージを伝えられるようにします。
これにより、顧客がブランドのメッセージを見た場合にちぐはぐ感を与えずに、言語表現的なブランドイメージを統一させることができるようになります。
トーン・オブ・ボイスで定められるルールの内容としては、大まかに言えば、「分かりやすく」、「具体的に」、「丁寧に」伝えるようにすることです。
つまり、言葉や文章が適度な情報量であり、しかも、分かりやすく、かつ、親切な口調でブランドの価値観を伝えるようにします。

逆に、避けた方が良い言語的表現(口調や語り口)については、細かい専門的な特徴ばかりを羅列するような機能的特性に偏ったもの、また、ふわっとしすぎて具体性を失ってしまっているような情緒的特性に偏ったもの、さらには、顧客目線を忘れてしまって、相手がどう思うのか、どう感じるのかを考えない口調になってしまっているものなどです。
これらは、情報が過剰であったり、逆に不足していたり、あるいは不親切で、しかも不快感を催すような語り口といえます。
こういったものは、トーン・オブ・ボイスでルール化することにより、予防するようにしましょう。
ブランドの信用を保つためです。

_2.メッセージシステムとは?

ブランド価値を言語的表現によって伝える際に守るべき点は、あらゆるタッチポイントで一貫性を維持することです。
一貫性があるからこそ、顧客からの信頼感が生まれるのでしたね。
逆に、言っている内容が以前とは違うものであった場合には、顧客は混乱したり、不信感を抱いたりするようになります。
そこで、言語的表現(メッセージ)の内容に整合性や一貫性を持たせるためのルールの体系作りが必要になってきます。

このブランドのメッセージに整合性や一貫性を持たせるためのガイド(指針)となるルールの体系を「メッセージシステム」といいます。
前述したトーン・オブ・ボイスは「どのように」言うか、つまり、語り口や口調といった「言い方」に重点を置いたルールブックでした。
それに対して、メッセージシステムは「何を」言うか、つまり、メッセージの内容に重点を置いたルールの体系になります。
したがって、メッセージシステムの内容としては、「誰に」「何を」「どのタッチポイントで」「どのように」伝えるかをルール化したものになります。

これによってブランド価値を効果的に表現する言葉を集約し、整合性や一貫性のあるメッセージをあらゆるタッチポイントで発信していくことができるようになります。
具体的には、各店舗の店頭での言語的メッセージや販売員による接客トーク、社長が行うスピーチ、広告や広報で伝えるメッセージ、展覧会などの企画で発表するメッセージ、WebやSNSで発信するメッセージなど、すべてのタッチポイントで一貫した内容のメッセージを発信することができるのです。
つまり、顧客やステークホルダーに伝わる内容があらゆるタッチポイントで統一されることによって、一貫性が生まれ、それがブランドに対する信用につながることになります。

_3.タグラインとステートメントとは?

ブランドが何を目指そうとしているのか、どんな価値を顧客に提供しようとしているのかを示すための文あるいは文章として、「タグライン(Tagline)」と「ステートメント(Statement)」があります。

まず「タグライン」とは、企業やブランドとしての本質を表現する一文のみで書かれたメッセージのことをいいます。
具体的には、企業やブランドが顧客やステークホルダーに対して向き合う姿勢や存在価値などの理念や想いとともに、分かりやすく一文で端的に表現したメッセージのことです。
言わば、ブランドの目指す理想像を一文で表現したものです。
ロゴの下に書かれていることが多く、ブランド名に次ぐ重要な言語的要素になります。

代表的なものをご紹介しますと、
・Panasoninc→「A Better Life, A Better World」
・東芝→「Leading Innovation」
・日立→「Inspire the Next」
・Nike→「Just Do It」
・McDonald's→「I'm Lovin' It」
・Apple→「Think different」
などがあります。
どの企業のタグラインも聞いたことのあるものばかりだと思います。

タグラインが社内外に浸透してきますと、ロゴなどのブランドシンボルに非常に近い機能を持つようになり、ブランド価値向上のためにとても重要な役割を果たすことになります。
そのため、ロゴと同じように、タグラインは企業やブランドとしての本質を長期的かつ永続的に表現するものとして大切に扱われます。
なお、タグラインはスローガンやキャッチコピーと混同して使われる場合がありますが、これらは明確に意味や役割が違います。
スローガンやキャッチコピーは、年度ごとや、その時々の戦略に応じて、広告などにその都度使われる言語的要素になります。
そのため、スローガンやキャッチコピーは、短期的・中期的な役割を果たすにとどまります。

次に「ステートメント」とは、企業やブランドにおける価値観や使命、存在意義を簡潔な文章で明らかにしたものです。
つまり、顧客やステークホルダーに対するブランドからの約束を書いた宣言文と言って良いでしょう。
ブランドがどんな姿を目指し、どんな価値提供を社会にしていくのかを明文化することによって、社内外の人々から信頼されることを目指します。
つまり、ブランド価値をステートメントで表現することで、社内外の人々に共通意識を持ってもらい、ブランドへの愛着を醸成していくのが目的です。
なお、タグラインが一文という簡潔なメッセージであるのに対して、ステートメントは簡潔な文章とは言え、比較的長い文章で書かれることが多いです。

_4.言語的ブランド要素を創っていく順番とポイント

前回までの記事も含めて、これまでに言語的ブランド要素が色々と出てきましたが、これらをどういう順番で創っていけば良いのかについて、そのポイントを見ていきましょう。
当たり前ですが、最初にブランド名を決めます。
これは前回の記事(→第30回)でご説明しましたので、詳しくはそちらをご覧になってみてください。
2番目にはタグラインを書きます。
タグラインが決まったら、3番目にはステートメントを書きます。
ここまではこれまでの説明の流れ通りですね。
ステートメントができたら、次に4番目としてはブランドストーリー(=ブランド価値を物語性ある文章で伝えるもの)を作ります。
尺の長いネットCM動画などを作って効果的にメッセージを伝える際に大事ですし、ブランドブックの中でストーリーを語っても良いでしょう。
なぜなら、物語性ある文章で書かれているものの方が、それを読んだ人々の記憶に残りやすいからです。
そして、5番目にはブランドのキャッチコピーを作ります。
情報が氾濫している現代では、まずは顧客やステークホルダーの目にとまり、読んでもらえなければ、せっかくのメッセージも意味がないからです。
最後に、各商品のパッケージや広告などに載せる個別キャッチコピーを作ります。

人は言葉で世界を認識する生き物です。
そのため、ビジュアルと同じかそれ以上に、どんな語り口や口調で、何をメッセージとして発信するのかが、ブランド価値の向上にとって非常に大切です。
ブランドの価値観や理念を一貫性あるメッセージで正確に顧客に伝えて、永く愛されるブランドに育てていきましょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第32回)では、「意外と侮れない<感覚>に訴えるブランド要素とは?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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