&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第32回)
「意外と侮れない<感覚>に訴えるブランド要素とは?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第32回目のテーマは、
「意外と侮れない<感覚>に訴えるブランド要素とは?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.視覚・言語以外のブランド要素も重要な役割を果たす

ブランドらしさを創るための大切な要素として、これまでに視覚的要素と言語的な要素の2つに分けてご説明してきました。
第29回の記事では、ロゴやカラー、配色、キービジュアル、ビジュアルイメージなど、ブランドらしさを形作る視覚的要素についてご説明しました。
また、第31回の記事では、トーン・オブ・ボイスやメッセージシステム、タグライン、ステートメントなどの言語的要素も、ブランドらしさを形作る大切なものであるとご説明しました。
ただし、ブランドらしさをターゲット顧客層やステークホルダーの皆様にお届けするには、これらの視覚的要素、言語的要素以外のブランド要素も活用されることが少なくありません。
むしろ、視覚、言語以外のブランド要素も侮れないほどです。

それでは、視覚、言語以外のブランド要素とはどのようなものでしょうか?
それはズバリ、顧客の五感を通じて訴えかけるブランド要素のことです。

人間の五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことですね。
様々なタッチポイント(=顧客接点)で五感を通じて感じるブランド体験を提供することにより、そのブランドらしさ(=ブランドイメージ)を顧客やステークホルダーに浸透させていくのです。
つまり、視覚や言語要素以外の五感に訴える要素も、ブランドの世界観を構築する重要な要素であるといえます。
(ただし、それには、そのブランドのコンセプトに合っていることが大前提になります。)

このブランド力をより強化するために行われる五感に訴える手法を「感覚マーケティング(Sensory Marketing)」「感覚ブランディング(Sensory Branding)」などと呼んでいます。
これにより、競合他社の店舗との差別化や、顧客の店舗滞在時間の伸長、ひいては顧客満足度の向上を図ることができ、ブランド力のより一層の強化を実現することができるのです。

_2.聴覚・嗅覚・味覚・触覚に訴えるブランド要素とは?

ここからは五感に訴えるブランド要素について具体的に見ていくことにしましょう。

強いブランドは、視覚的要素や言語的要素に加えて、五感に訴える要素のいくつかをさらにプラスしてブランドらしさ(=ブランドの世界観)を構築しています。
そうすることで、視覚や言語以外からの五感から思い起こされる強いブランドイメージが顧客の頭の中にできあがるからです。

それでは、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のそれぞれに訴えるブランド要素を具体的な事例とともにご説明していきます。

2-1.音(聴覚)に訴えるブランド要素

テレビCMの中で流れるメロディーや、ラジオのジングル(=ラジオ番組の冒頭や合間に流れる短い音楽)などが、音(聴覚)に訴えるブランド要素としては有名ですね。
ドラマや映画の主題歌となるようなタイアップ曲やBGMがヒットすると、相乗効果で映像作品も音楽も両方とも爆発的に売れることがあります。
これもドラマや映画の聴覚に訴えるブランディングと言えるでしょう。
その音楽を聞くとそのドラマや映画を思い出すという具合に、顧客の頭の中に音がブランドのイメージとともに刷り込まれている状態だといえます。

他に、バイクの製造・販売メーカーであるハーレーダビッドソンは、そのバイクのエンジン音自体が音によるブランド要素になっているとも言われています。
熱狂的なファンは、エンジン音をも含めてハーレーダビッドソンの固定ファンになっているからです。

また、現在はそれほどでもありませんが、1980年代くらいまでの頃は日本車よりもヨーロッパ車の方がドアが閉まる音にまで配慮されていて、ヨーロッパ車の方を好む車ファンも根強くいました。
ヨーロッパ車のデザイナーは、ドアが閉まる音までデザインの中に含めていたと言われています。
つまり、「ガチャン!」と閉まるのではなく、「パタン」と静かで上品な音で閉まるように設計されていたそうです。

さらには、ショッピングスーパーやモールのオリジナルソングなども、日常の中に溶け込んでいる音によるブランディング要素と言えるでしょう。
その音楽を思い出すと、「そろそろ買い物に行かなくちゃ」との思いとともに、そのスーパーやモールのことを思い出すからです。

ところで、このような聴覚に訴えかけるブランド要素は、ある法則を根拠にしています。
皆さんは第一印象に与える要素として、言語、視覚、聴覚のそれぞれがどのくらいの割合を占めていると思われますか?
答えはやはり、視覚が55%と1番になります。
しかし、2番目に来るのは言語ではなく、なんと!38%で聴覚になります。
最後の3番目が言語要素となり、7%しかありません。
つまり、視覚の次に第一印象に大きな影響を与える聴覚に注目して、そこに訴えるのは、きちんとした科学的根拠に基づいたブランディングなのです。

例えば、おしゃれなカフェやエステサロンでは、ローテンポのBGMを流すことが多いです。
これは、ゆったりした快適な空間作りの一環として、音も緩やかに流れるような静かで落ち着いた曲が選ばれるからです。
他方、顧客の回転率を高めたいスーパーやショッピングセンターなどでは、比較的ハイテンポのBGMを流していることが多いです。
ハイテンポの曲の方が顧客ものんびりすることなく、その場に長居することはないため、回転率が上昇するからです。
また、イベント会場の音楽なども、そのイベントの目的や趣旨、オーディエンスの趣味嗜好などに合わせた世界観になるような音楽がBGMとして選ばれています。

このように、音(聴覚)に訴えかけるブランド要素は、私たちも日々接している身近なものだと言えるでしょう。
逆から言えば、私たちは普段、耳からもブランドイメージが注入されているといえますね。

2-2.香り・匂い(嗅覚)に訴えるブランド要素

高級化粧品や香水では、「このブランドと言えば、この香り」と言えるような独自の香りを持っている商品があります。
シャネルやクリスチャンディオールなどの有名高級ブランドがそうですね。
ブランドとは、他者と差別化された独自性ある価値のことですから、顧客から見て有益な独自の香りを持っている商品自体がブランドであるといえます。
そのため、このブランド価値を守るために、アメリカ合衆国では匂いの商標があるほどです。

ところで、実は、香り・匂い(嗅覚)に訴えるブランド要素も、科学的な根拠をもとに設計されています。
つまり、「プルースト効果」と言って、人間はその香りを嗅いだ時の経験とリンクして物事を記憶しやすい性質を持っています。
このプルースト効果を活用して、ブランドイメージを顧客の頭の中で強固なものにするために、嗅覚に訴えるブランド要素が活用されるのです。
ちなみに、化粧品売場がデパートの1階フロアに集中している理由をご存知ですか?
これは、化粧品売場から漂う良い香りが吹き抜けを通って上層階にまで届くようにとの狙いがあるためです。

このように嗅覚に訴えるブランド要素は科学的根拠に基づいたものであり、ブランドイメージが強く記憶されやすいメリットがあります。

逆に弱点としては、特に店舗型ビジネスですと、店舗から離れたところに香りや匂いを届けるのが困難なことです。

しかし、この弱点を逆手にとって、「ここでしか体験できない香り」というメッセージを打ち出すことで、かえってブランド価値を高められることもあります。

例えば、東京スカイツリー内のすみだ水族館は、「Arobalance(アロバランス)」という特殊な成分で調合された居心地の良い香りを空間内に提供して、集客アップに貢献させています。
Arobalance(アロバランス)はストレスコントロールを司る交感神経に作用してリラックス効果をもたらすように設計されており、「リラックス空間としての水族館」という当館のコンセプトにフィットしているからです。

また、航空会社のANAは12種類の天然成分からなるオリジナルアロマを開発し、機内のおしぼりやハンドソープに配合しています。
「Inspiration of Japan」というコンセプトをアロマの香りに託して顧客に届けていると言えるでしょう。

さらには、自動車メーカーであるトヨタの高級車LEXUSのショールームにおいても、四季折々の香りによるブランディングがなされています

どれも、まさにここでしか体験できない香りを提供することで、嗅覚に訴えるブランド要素を固定ファン作りの一助にしているのです。

2-3.味(味覚)に訴えるブランド要素

他者が絶対に真似できない味を作り出せれば、それ自体が強い独自性を持つようになり、ブランド価値が高まります。
この味覚に訴えるブランド要素の具体例として、あまりにも有名なコカ・コーラについてご紹介しましょう。

皆さんは、「実は、コカ・コーラはその原液を作るためのレシピの特許を取っていない」というのはご存知でしょうか?

なぜ特許を取っていないかといいますと、特許を取得してしまいますと、一定期間を経過した後には他社もそのレシピを自分のために活用することができるようになってしまうからです。
そのため、コカ・コーラはその原液を作るためのレシピの特許を取得することなく、創業以来、門外不出扱いにしているのです。
具体的には、レシピのメモはアメリカのジョージア州アトランタにあるコカ・コーラ本社の中の特別な施設に保管されています。
実際、コカ・コーラのレシピを知っているのは、世界でも数人しかいないと言われています。

コカ・コーラは、そのブランドの独自性を守るために厳重にレシピを守ってきているといえます。
ちなみに、コカ・コーラの社長及び副社長もレシピの内容を知らないとのことです。
ブランド価値を守り抜くための姿勢が徹底されていますね。

ところで、味の感じ方は、実は、飲食物が提供された時の見た目や香り、その時の温度、硬度、噛み応え、口の中に含んだ時の感触などといった多くの感覚で捉えられるものです。
つまり、共感覚で捉える必要があるといえます。
これは、味覚がしばしば他の感覚の言葉で代替表現されていることからも分かります。
例えば、辛さを表す言葉に「しびれるような辛さ」というのがありますね。
しびれるというのは本来味覚ではなく、触覚です。

以上述べたところから、味覚をブランド要素の1つとして効果的に顧客に提供するには、味そのものだけではなく、それを提供する空間作りや雰囲気作りなども含めて、共感覚を上手く刺激するための総合的な演出が必要になります。
家族や恋人と喧嘩した直後に食べるご飯は美味しく感じられないことが多いですが、逆に、仲良く楽しい雰囲気で食べる食事は同じ食事なのにより美味しく感じられることからも分かります。

2-4.触り心地(触覚)に訴えるブランド要素

最後は、コカ・コーラの独特なくびれた形の瓶(容器)や、キリン「氷結」の缶表面の凹凸など、触り心地(触覚)に訴えかけるブランド要素です。
これは、触り心地を独特なものに仕上げることで、触覚を通して顧客のイメージの中に独自のポジションを築くことを狙うブランディングですね。

最近では、テクスチャー加工による特殊印刷で表面の光沢感や凹凸を実現し、触覚へ訴求するパンフレットなどがあります。

また、インタラクティブ動画と言って、画面上の選択肢をタッチしながら選ぶような、触れる仕組みを施した体感型の動画が一般的になってきていますね。
これらも、触覚に訴えるブランド要素と言えるでしょう。

_3.五感を総合的にデザインするブランディングが求められる時代

以上、五感に訴えかけるブランド要素を具体例とともに見てきました。
視覚的要素や言語的要素以外にも、五感に直接訴えかける仕掛けを施すことで独自の価値を築いているブランドが多くありましたね。

強いブランドは、感覚を通じてブランドのイメージが思い起こされるようにブランドらしさを演出しています。
時には、視覚や言語よりも強力に顧客の記憶に残ることがあります。

そのため、五感に直接訴えかけるブランド要素を総合的にデザインすることは、他のブランドとの違いを生み出すのに有効な武器になると言えるでしょう。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第33回)では、「社内の誰もがブランド『らしさ』を守れるようにするには?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

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クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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