&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第33回)
「社内の誰もがブランド『らしさ』を守れるようにするには?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第33回目のテーマは、
「社内の誰もがブランド『らしさ』を守れるようにするには?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.ブランド『らしさ』を守るためには?

皆さんは店頭で見かけた商品のロゴやパッケージがいつもと違う表現になっていたらどう思われるでしょうか?
例えば、ロゴの形や縦横の比率及び規格が違っていたり、いつもとは違う書体(フォント)だったり、インクの色が違って見えたりしたらどうでしょうか?
おそらく、「よく似た偽物かもしれない」と思って警戒心が高まり、その商品を購入しないでしょう。
ロゴやパッケージなどの視覚的なブランド要素に限らず、言語的なブランド要素においても、それらがブランド本来の世界観と異なる表現をしている場合には、ブランド『らしさ』が伝わりにくく、顧客からの不信感を招いてしまうものなのです。
そうなりますと、一般消費者をターゲット顧客層にしているブランドは売れなくなってしまいます。
また、企業を顧客とするB to B型ビジネスにおいても、顧客企業から見れば「自社のロゴすら適切に管理できない会社だ」との疑念を抱かせてしまうことになり、信用度が大きく下がってしまいます。
当然ながら、そういった信用度が低い状態が続きますと、発注先企業から外されることになり、B to B型ビジネスもダメになってしまいます。
つまり、ブランド『らしさ』が保たれていないと顧客は不安になり、それによって選ばれないブランドになってしまうのです。
選ばれないブランドということは当然ながら購入されないので、売上には全くつながりません。

それでは、ブランド『らしさ』を守るためにはどうすれば良いのでしょうか?

ブランド『らしさ』を保つために最も大事なことは、顧客とのあらゆるタッチポイント(=顧客接点)において一貫性を保つことです。
「神は細部に宿る」という言葉があるように、顧客の目や耳に入るもの及び体験するものの全てにおいて一貫性を保つことが、ブランド『らしさ』を守るための命といえます。
例えば、ロゴはもちろんのこと、商品のパッケージやチラシ・看板などの広告物、webサイト、SNS、店舗の内装や外観、イベントや展示会、社員の制服や名刺・社員証など、顧客がブランドを体験する全てのものにブランドイメ―ジを伝える一貫性がなければなりません。
タッチポイントごとにバラバラのブランドイメージを与えてしまっては、顧客は混乱し、不信感を抱き、そのブランドを頭の中から消去するようになるでしょう。

そこで、ブランドイメ―ジの一貫性を保つために『ブランドガイドライン』を制定します。
これは、ブランドの視覚的要素や言語的要素についての表現方法や使い方などを定めたルールブックです。
全社員がブランドガイドラインに定められたルールを厳格に守ってブランドに関わることにより、ブランドが社内外に伝えたい価値観・世界観が浸透していくことになります。
(なお、ブランドガイドラインは第10回記事でも簡単にご紹介しましたので、あわせてそちらの記事もお読みいただければ幸いです。)

_2.ブランドガイドラインに定めるべき3要素とは?

ブランド『らしさ』を守り抜くために必要なブランドガイドラインには、具体的にはどのような内容のルールを定めれば良いのでしょうか?

一般的には、ブランドガイドラインには大きく分けて3つの要素、つまり、
・「イントロダクション」
・「ヴァーバルアイデンティティー」
・「ヴィジュアルアイデンティティー」
を3章構成に分けて、それぞれの章に必要なルールを盛り込むのが良いとされています。

以下、この3つの要素のそれぞれについて具体的に説明していきます。

2-1.イントロダクション

まず、イントロダクションですが、本で言えば第1章に書かれる内容と言えるもので、そのブランドの根幹となる考え方を書き記しておきます。
つまり、ブランドとしての目指したい姿(=理想像)や、ブランドの体系(=事業ブランドや商品ブランドが複数ある場合などの相互の関係性)について、それらをまとめるための根幹となる考え方を文章で書き記しておきます。
こうすることで、ブランドガイドライン全体を貫くための筋道が一本通るからです。

次に、イントロダクションの中で書くべき内容の順番についてご説明します。

まずは、市場の中での立ち位置とも言うべきポジショニングを明確に示すことです。
自社の独自性をターゲット顧客層に訴求するために、市場の中でどのようなポジションを取りたいのかを明確にします。
これにより競合ブランドとどういう点で差別化していきたいのかを社内外の人々に理解してもらうことができます。

2番目に書き記しておくべき内容としては、ブランドパーソナリティー(=ブランドの人格)を明確に定めておくことです。
企業ブランディングにおいても、事業ブランディングにおいても、あるいは、商品ブランディングにおいても、無機質な印象を顧客に与えるのではなく、情緒的な視点から「人」が感じられるように表現するのが効果的です。
顧客は人間味があるキャラクターや物語に対してより一層具体的なイメ―ジを持つことができ、ひいては親近感を覚えてファンになりやすいからです。
もちろん、ブランドパーソナリティーの中には、その人が持つ雰囲気(=力強くて頼もしい、繊細で優しい、都会的で知的な雰囲気など)も含めて設定しておきます。

最後の3番目には、グループ事業間の階層分けや複数の事業ブランドなどがある場合に、それらの関係性や位置づけといったブランド体系の構造を図解した「ブランドアーキテクチャー」を定めておきます。
そうしますと、社内外の人々に全体像を理解してもらいやすくなります。

このように、ブランドガイドラインの第1章とも言える「イントロダクション」には、「ポジショニング」、「ブランドパーソナリティー」、「ブランドアーキテクチャー」の3つを小見出しとして立てて、そのブランド独自の価値観や世界観が明確になるような根幹となる考え方を書き記しておくようにしましょう。

2-2.ヴァーバルアイデンティティー

ブランドガイドラインに定めるべき2つ目の要素としては、ヴァーバルアイデンティティーに関するルールがあります。
「ヴァーバルアイデンティティー」とは、ブランドが目指す姿(=理想像)がどういうものなのかを文章で伝えるものです。
いわば、そのブランドの世界観を文章で構築し、表現したものと言って良いでしょう。

ヴァーバルアイデンティティーには主に以下のものを定めます。

まず前提として、ブランドの世界観を表現する言語的要素には、ブランド名、タグライン、ステートメント、ブランドストーリー、商品ごとの個別キャッチコピーなどがあります(詳しくは第31回記事でご説明してありますので、よろしければそちらもご覧ください。)。

これらの中でもヴァーバルアイデンティティーに定めておくべきものは、ブランドが目指す姿(=理想像)を心により一層訴えかけるためのブランドストーリーです。
前述のブランドパーソナリティーと相まって、物語性のある内容で書いた方が、ブランドが目指す世界観を具体的かつ情緒的に表現することができ、社内外の人々に理解されやすくなるからです。
具体的には、なぜそのブランドが生まれてきたのかといった歴史や、大切にしていきたい価値観、ブランドを通して社会の人々にどのようにつながっていきたいのかといった想いを物語形式で表現すると良いでしょう。

次にヴァーバルアイデンティティーに定めておくべきものとしては、タグラインとステートメントです。
タグラインは、ブランドが目指す姿を端的に一言で、かつ、象徴的に表現した文章になります。
一文で言い切ってしまうような短いフレーズであることが特徴的です。
それに対して、ステートメントは、ブランドが目指す世界観や理想像を短い文章で簡潔に表現したものです。
タグラインよりは長い文章ですが、それでも長すぎることなく、顧客やステークホルダーに伝えたいメッセージや約束を簡潔に表現する宣言文と言えます。

最後は、キーメッセージになります。
ブランドストーリーやステートメントの内容を要約して、ブランドとしてどうしても伝えなくてはならないメッセージと伝え方を定めたものです。
自社の誰が顧客に対応したとしても、同一のメッセージを伝えられるようにするためです。

タグラインはともかく、ブランドストーリーやステートメントは文章が比較的長いため、全ての社員が暗唱できるようにすることは困難です。
また、一番伝えたいことを短く要約して伝える方が、顧客にとっても覚えやすくて親切です。
そのため、全社員が顧客やステークホルダーにブランドの世界観を分かりやすく伝えられるように、ブランドストーリーやステートメントを覚えやすく要約したものがキーメッセージなのです。
キーメッセージに書かれている内容は、日々の朝礼や会議、研修を通して、全社員が正確に言えるようにトレーニングを重ねましょう。

2-3.ヴィジュアルアイデンティティー

ブランドガイドラインの中に定めるべき3つ目のルールとしては、ビジュアルアイデンティティーがあります。
売り手側がどう見せたいか/顧客からどう見られたいかの2つの視点からブランドのイメージが合致するように、視覚的なブランド要素を創り上げていかねばなりません。
これがバラバラになりますと、顧客は混乱を引き起こし、覚えてもらえなくなってしまいます。
そのため、視覚的なデザインの様式や作法を統一するルールを定める必要があるのです。

ロゴやアイコンなどのカラーや配色、形などを定めてルール化します。

また、モーションと言って、場面に合わせた視覚的ブランド要素の使い方を定めたルールも必要です。
「明るい背景や場所では、ロゴはこのようなカラー・明度・彩度で使う」などといったものを決めておくのです。

最後にやってはいけない使用例としての禁止事項も書いておきます。
例えば、規格外の色に勝手に変更してしまったり、ロゴやアイコンを回転・反転させたり、また、視認性が悪いくらいに小さく表示してしまったりなど、ブランドとして見せたくない見せ方については、禁止事項として定めておくと良いでしょう。

_3.ブランドガイドラインを定めるにあたって大切なこととは?

ブランド『らしさ』を守り抜くための全社員共通のルールブックが「ブランドガイドライン」ですね。

ブランドガイドラインの形でルールを定める上で大切なことは、ブランドが目指す姿(=理想像)をしっかりと正確に伝えられるようなストーリーがルールの端々からうかがえるようなものにすることです。

また、ルールが細かすぎるとかえって社内外の人々に理解されず、浸透しません。
そのため、ブランドガイドライン全体が言いたいこと(=ブランドが守りたい世界観=『らしさ』)を短い合言葉で伝えられるようなメッセージ性も必要でしょう。

最後に、ブランドガイドラインというルールブックを制定したらそれで終わりにするのではなく(それだけでは神棚に飾っただけのお札になってしまいます)、日々のミーティングや研修、1on1などを通して、そのルールの浸透を図っていくようにしましょう。
全てのタッチポイントで全ての社員がブランド『らしさ』を体現していくことで初めて、顧客やステークホルダーからブランド価値を認められるようになるからです。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第34回)では、「社員にブランドの理念や価値を体現してもらうには?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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